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FX会社が倒産したら、口座に入れた証拠金はどうなるのでしょうか。国内のFX業者のページには、たいてい「信託保全」と書いてあります。FXの信託保全で何が決まっていて、何が守られないのかを、仮の数字で見ていきます。
結論を先に書きます。国内のFX業者は、証拠金を会社のお金と分けて、信託銀行などへの「信託」で管理しなければなりません。業者が破綻したら、弁護士などの受益者代理人(お客さんの代わりに権利を使う人)を通じて返されます。ただし元本保証ではなく、全額が戻らない場合もあります。
たとえば10万円を入れて、取引の損で7万円に減っていたとします(仮の例)。信託保全で返してもらう計算のもとは、この7万円です。信託保全は、取引の損までは埋めません。
信託保全ってどういうしくみ?

FXの証拠金は、業者の会社のお金と分けて管理する決まりです。法律(金融商品取引法)が決めているのは、「分けて管理する」ところまでです。分け方と中身は、内閣府令(国が決める細かい決まり)が決めています。
FXの分け方は信託だけです。信託は、お金を信託銀行などに預けて、決まった目的のために管理してもらうことです。業者が預け、信託銀行などが預かります。そして、お客さんが元本の受益者(信託のお金を受け取る権利を持つ人)になります。
あなたが10万円を入金したとします(仮の例)。業者は、その分を会社のお金とは分けて、信託しておく決まりです。いつ・いくら信託するかの計算は、4つ目の節で見ます。
信託でありさえすればよい、というわけではありません。この信託の契約の中身は、15項目で決められています。条文での名前は「顧客区分管理信託」です。
このしくみは、最初からあったものではありません。店頭FX(業者と直接取引するFX)の業者が、お客さんの証拠金を流用するなどの事例が起きました。
それを受けて、2009年に内閣府令が改正されました(8月1日施行)。この改正で、FXの分け方は金銭信託だけになりました(金融庁の有識者検討会の報告書)。
同じ改正で入ったロスカット(損が大きくなると、取引を自動で終わらせるしくみ)の義務づけは、国内FXにゼロカットが無い理由で読みました。
やること:使っているFX業者のページに、「信託保全」の説明があるかを確かめておく。
お金はどこに預けられているの?

預け先は、信託会社や、信託の仕事をする金融機関です。FXの証拠金は、ここへの金銭信託だけが認められています。暗号資産を対象にした同じ種類の取引(暗号資産等関連デリバティブ取引)も同じです。
FXは、デリバティブ取引(通貨などの値動きをもとにした取引)の一つです。FXと暗号資産の取引以外のデリバティブ取引では、ほかの方法も認められています。くらべると次のとおりです。
| 分けておく方法 | FX | それ以外のデリバティブ取引 |
|---|---|---|
| 信託会社などへの金銭信託 | ○(これだけ) | ○ |
| 銀行などへの預金(保証金だと名義で分かるもの) | × | ○ |
| カバー取引の相手方に預ける | × | ○ |
| 媒介等の相手方に預ける | × | ○ |
カバー取引は、業者が自分のリスクを減らすために、別の金融機関などと行う取引です。その相手に差し入れたお金を、信託する額から差し引くこともできません。
2009年の改正のときの意見募集(パブリックコメント)で、この点が質問されました。金融庁は、金銭信託への一本化は顧客資産の保護が目的なので、差し引くことは認められないと答えています。
株価指数CFDや商品CFDの証拠金は、この決まりではなく別の条文で守られています。個人の証拠金は、どちらも信託です。CFDの側はCFDの証拠金はどの条文で守られるかで読みました。
取引所で行うFXの「くりっく365」は、しくみが別です。証拠金は全額が東京金融取引所に預けられ、取引所が保管します(公式サイト)。くりっく365の記事で比べました。
当サイトが広告を掲載している国内の2社は、信託先を次のように書いています(2026年9月20日閲覧)。
- JFX株式会社:三井住友銀行
- 株式会社DMM.com証券(DMM FX):日証金信託銀行・SMBC信託銀行・SBIクリアリング信託
信託先の名前は、契約の前に業者が渡す書面にも載っています(口座開設の書面には何が書いてあるか)。取引のたびに届く取引報告書にも、預託先の名前が書かれます(FX業者から届く報告書の記事)。
やること:契約の前の書面か取引報告書で、自分の証拠金の信託先を確かめておく。
会社が倒産したら誰が返してくれる?

窓口になるのは受益者代理人です。お客さんに代わって、信託のお金を受け取る権利を使う人です。必ず選ばれ、少なくとも1人は弁護士・公認会計士・税理士などです。
業者が次のような事態になると、弁護士などの受益者代理人だけが権限を使います。登録の取消し、破産手続開始などの申立て、廃業・解散、業務停止命令などです。そうなると業者は、原則として信託のお金の運用を指図できません。
受益者代理人が必要と判断すれば、お客さん全員の権利をまとめて使います。1人ひとりへの支払いは、お金に換えた額を、各自の金額の割合で分けた額です。各自の金額が上限です。
仮の例です。業者があなたに返すべき額(各自の金額)が7万円なら、受け取れるのは7万円までです。もし信託のお金が全体で1割足りないとします。そのとき信託から受け取れるのは、割合で分けた6万3,000円です(単純にした計算)。
2社とも、信託銀行には直接請求できないと説明しています。信託銀行は信託のお金を管理するだけで、お客さんへの支払義務は負わない、という説明です。
返してもらうまでには、時間がかかります。JFXは「一定の時間を要する場合」、DMM FXは「多少のお時間を要する見込み」と書いています。
JFXは、受益者代理人を社外の弁護士としています。ふだんの確認は、復代理人(代理人から任された人)である社内の内部管理責任者です。DMM FXは、受益者代理人を通じて返還を受ける、と説明しています。
業者がサービスをやめるときの公告・決済・口座の移管の手順は、FX業者がやめたときの記事で読みました。
やること:業者が破綻したときの窓口は、信託銀行ではなく受益者代理人だと覚えておく。
信託するお金は毎日計算される?

毎日計算されます。業者は、取引をやめた場合にお客さんへ返すべき額を、1人ずつ出します。その合計が、信託しておくべき額(必要額)です。
業者は、この2つの金額を毎日計算しなければなりません。計算では、決済したと考えたときの評価益は含め、評価損は差し引けます。評価損益は、まだ決済していない取引の、いまの含み益や含み損です。
仮の例です。証拠金10万円で、決済前の含み損が2万円なら、8万円で計算できます(スワップは考えない単純な計算)。
信託のお金が必要額に足りなくなったとします。業者は、その翌日から数えて2営業日以内に、足りない分を追加します。信託を解約できるのは、必要額を超えている分の範囲内か、別の同じ種類の信託へ移す場合だけです。
2社は、自社の運用を次のように説明しています(法令の文言ではありません)。
| くらべる所 | JFX | DMM FX |
|---|---|---|
| 信託する額 | 取引証拠金に、未決済ポジションの損益とスワップを加減した額 | 預託証拠金残高に、評価損益とスワップポイントを加味した額 |
| 計算と反映 | 毎営業日に計算し、2営業日後に信託保全の対象とする | 毎営業日終了時に確認できた額を信託する |
評価損益を入れた計算、弁護士の受益者代理人、「2営業日」という日数。どれも法令の決まりに出てくるものです。業者のページは、決まりを自社の運用に置き換えて説明しています。業者ごとに違うのは、信託先と説明の細かさです。
法令が求めているのは、毎日の計算と、不足したら2営業日以内の追加です。相場が大きく動いた直後には、差が出ることがありえます。計算した額と、実際に信託されている額のあいだの差です。
やること:使っている業者のページで、信託する額をいつ計算し、いつ反映するかを確かめておく。
信託保全でも戻らないお金はある?

あります。信託保全は元本保証ではありません。預けたお金を業者の財産と分けておくためのもので、取引の損とは関係がありません。
10万円を入れて7万円に減った仮の例なら、減った3万円は信託保全では戻りません。2社とも、損失が証拠金の額を上回るおそれがある、と書いています。
全額が戻らない場合もありえます。JFXは、システム障害や情勢の急変などを挙げています。そのせいで、保全すべき金額が正しく算出できなかった場合などです。そのとき信託された金額が証拠金の総額に足りず、一部が返還されない場合がある、と明記しています。
前の節の「毎日の計算」と「2営業日以内の追加」からも、同じことが読めます。信託保全は強いしくみですが、「1円も欠けない」ことを約束するしくみではありません。
証券会社の破綻に備えた「1人1,000万円」の補償(投資者保護基金)も、FXの証拠金には及びません。くわしくは投資者保護基金はFXを補償しないで確かめました。
やること:業者の信託保全のページは、見出しより情報が多い「注意事項」まで読んでおく。
XMの分別管理と何が違うの?

海外業者のページにも「分別管理」という言葉があります。XMTradingを運営する Tradexfin Limited の規約(Client Agreement・英文)で、該当する3つの項を読みました。
- 66.1項——お客さんの資金は、承認された銀行の口座で、会社の資金と分けて保有される。ほかのお客さんの資金とまとめて、1つの口座に入れられることがある
- 47.5項——現金の証拠金は、所有権ごと会社へ移る形で支払われ、お客さんはそれに対する権利を持たない。会社は、お客さんに返す債務として記録する
- 72.3項(i)——会社が支払不能になった場合、お客さんの請求は優先されないことがある。そのとき、お客さんは一般債権者(返してもらう権利はあるが、優先されない人)になる。分けて保有している資金でも、ほかの債権者の請求から常に安全とは限らない
⚠ 上の3点は原文(英語)からの当方の要約です。正文は英語版です。
日本の顧客区分管理信託では、お客さんは元本の受益者です。業者が破綻しても、信託のお金は業者の財産とは別のものとして、受益者代理人を通じて分配されます。
XMの規約が書いているのは、次のことです。口座は分けるが、お客さんの立場は返還を求める債権者(返してもらう権利を持つ人)だ。同じ「分別」でも、破綻したときの立ち位置が違います。
これは、XMが規約に自分で書いていることの確認です。危ないと言いたいのではありません。言葉が似ていても、支えているしくみは同じではない、という話です。
運営会社と規制当局の関係はXMの運営会社と規制当局に、登録の有無の確かめ方は登録業者一覧の読み方にまとめました。
やること:しくみの違いを知ったうえで、口座に置く金額を決める。
まとめ

- FXの証拠金は、会社のお金と分けて、信託銀行などへの金銭信託で管理する決まり。預金で分ける方法も、カバー取引の相手方に預ける方法も、FXでは認められない
- 信託の中身も15項目で決まっている。お客さんが元本の受益者で、弁護士などの受益者代理人が付く
- 業者が破綻したら、窓口は受益者代理人。信託銀行には直接請求できず、返還には時間がかかる
- 必要額は毎日計算し、不足したら翌日から数えて2営業日以内に追加。相場が大きく動いた直後は、差が出ることがありうる
- 信託保全は元本保証ではない。取引の損は戻らず、全額が戻らない場合がありうると業者自身が書いている
- 義務になったのは2009年(8月1日施行)。きっかけは、店頭FX業者による顧客証拠金の流用などの事例
- XMの規約は、分けて保有すると書く一方で、現金の証拠金は所有権ごと移り、支払不能のときは一般債権者になりうる、とも書いている。同じ「分別」でも、しくみが違う
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国内の登録業者を併用する、という選び方
このサイトは海外業者の取引条件を扱っていますが、国内の登録業者を併用するという選択もあります。国税庁タックスアンサー No.1521 の原則では、第一種金融商品取引業者または登録金融機関との店頭デリバティブ取引は申告分離課税で、損失を翌年以後3年に繰り越せます。この線がどこに引かれているかは総合課税の記事に書きました。
- MATRIX TRADER(JFX株式会社/関東財務局長(金商)第238号・第一種金融商品取引業)

- 【DMM FX】(株式会社DMM.com証券/関東財務局長(金商)第1629号・第一種および第二種金融商品取引業)

⚠ 実際にどちらの課税区分になるかは、取引の相手方が第一種金融商品取引業者または登録金融機関かどうかで決まります。上に書いた2社の登録番号と業務の種別は、金融庁「金融商品取引業者登録一覧」(令和8年7月31日現在)で確認しました。登録は取り消されることも、業務の種別が変わることもあります。最新は同じ一覧でご自身で確かめてください。また、国内業者には金融庁の規制により個人口座の最大レバレッジに上限があります。
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XMTradingはTradexfin Limitedのブランドで、セーシェル金融サービス庁の規制を受けており、日本の金融庁の登録は受けていません(金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」に掲載)。デリバティブ取引には投資元金を失うリスクがあります。
出典・注記
- 金融商品取引法 第43条の2、第43条の3(e-Gov法令APIで取得・2026年9月20日)
- 金融商品取引業等に関する内閣府令 第143条、第143条の2、第143条の3(e-Gov法令APIで取得・2026年9月20日)。表と本文は条文の要約で、号の全部は載せていません
- 本文と条文の対応:会社のお金と分けて管理する義務=金融商品取引法43条の3第1項(法律が定めるのは「区分して管理」まで。方法は内閣府令に委ねられ、この条文に「信託」の語は出てこない。「有価証券関連デリバティブ取引等」はかっこ書きで除かれ、株式や株価指数を対象にしたデリバティブ取引は43条の2(分別管理)の側に規定がある)/FXと暗号資産等関連デリバティブ取引等は金銭信託だけ=内閣府令143条1項1号、それ以外のデリバティブ取引等=同項2号/顧客区分管理信託の要件(1号〜15号)=143条の2第1項(1号 業者が委託者・信託会社などが受託者・顧客が元本の受益者、2号 受益者代理人、4号 登録の取消しなどのときは弁護士などの受益者代理人だけが権限を行使、6号 2営業日以内の追加、9号 解約の範囲、11号 運用の指図の制限、12号〜14号 受益権の一括行使と支払いの額)/個別顧客区分管理金額・顧客区分管理必要額と評価損益の扱い=143条の2第2項/毎日の算定=143条の3/契約の前の書面の「財産の管理方法及び預託先」=内閣府令94条1項4号(店頭デリバティブ取引)/取引報告書の分別管理上の預託先の商号または名称=内閣府令102条1項5号
- 金融庁「『金融商品取引業等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)』等に対するパブリックコメントの結果等について」(平成21年7月3日)。公布日・施行日・経過措置・意見の件数は同ページ、カバー取引先への差入額の扱いは「コメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方」による(2026年9月20日閲覧)。改正府令は平成21年(2009年)7月3日に公布、8月1日に施行。すでに営業していた業者には6か月の経過措置。案には18の団体と163の個人から、延べ246件の意見が寄せられた
- 金融庁「『店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会』報告書」(平成30年6月13日公表)「1.店頭FX取引の規制に関する経緯」。経緯の要点:1998年4月に外国為替取引の完全自由化(店頭FXが広がり、業法の監督を受けない専業会社が数多く参入)。2005年7月、トラブルと投資家被害の拡大を受けて、金融先物取引法の改正で登録制・財務規制・行為規制(2007年からは金融商品取引法が根拠法)。2009年、店頭FX業者による顧客証拠金の流用等の事例が生じたことから内閣府令を改正し、①区分管理の方法の金銭信託への一本化、②ロスカット・ルールの義務づけ、③個人の証拠金規制が入った
- JFX株式会社「信託保全」ページ、株式会社DMM.com証券 DMM FX「安心・安全の信託保全」ページ(いずれも2026年9月20日閲覧)。信託先・計算方法・注意事項は各ページの記載による。根拠の示し方は、JFXが「金融商品取引法に基づき」、DMM FXが「金融商品取引業等に関する内閣府令第143条の規定」
- Tradexfin Limited「Client Agreement – Terms and Conditions of Business」第47.5項、第66.1項、第72.3項(i)(2026年9月20日取得)。当方の要約であり、正文は英語版です。本文の「1つの口座」「所有権ごと会社へ移る形」「一般債権者」は、それぞれ omnibus account、outright transfer of title、general creditor の当方の訳です。セーシェルの法制度のもとで顧客の資金が実際にどう扱われるかは、本記事では確認していません
- 過去に顧客証拠金の流用が問題になった個別の業者名・事案は、本記事では確認していません
- 入金10万円・取引の損で7万円(減った3万円)、含み損2万円で8万円、全体で1割の不足のとき6万3,000円は、仮の例です。スワップなどを含めない単純な計算です
- 本記事には、当サイトが広告を掲載している業者(JFX株式会社・株式会社DMM.com証券・XMTrading)が含まれます。記載は各社の公表資料によるものです
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