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国内FXで相場が急に飛び、口座がマイナスになったら、その分は払うのでしょうか。国内FXに「ゼロカット」(マイナス分を請求せず、ゼロに戻す取り決め)が無いのは、なぜでしょうか。
結論を先に書きます。国内FXでは、口座のマイナス分は「不足金」として、業者への借り(債務)に残ります。入金10万円で残高が−5万円になれば、その5万円を払うことになります(仮の例)。
ゼロカットが無い理由は、よく「法律で禁止だから」と言われます。ただ、金融庁がそう判断した文書を、当方は確認していません。金融庁の検討会(2018年)は別の2つの心配を挙げ、マイナス分を業者に負わせる規制は「なお慎重な検討が必要」としました。
「追証」と「不足金」は何が違う?

ゼロカットの話で混ざりやすいのが、追証と不足金です。どちらも証拠金(取引のために業者へ預けるお金)にかかわる言葉ですが、出てくるときが違います。
| くらべる所 | 追証(追加証拠金) | 不足金 |
|---|---|---|
| いつ出るか | ポジション(まだ決済していない取引)を持っている間 | 決済された後 |
| 何のお金か | ポジションを持ち続けるために足す証拠金 | 損が証拠金を上回り、口座がマイナスになった分 |
| 入れなかったら | 強制的に決済される | 業者に対する債務(借り)として残る |
追証は、制度がある業者と無い業者があります。当サイトが広告を掲載している国内の2社で見ると、こうです。
- DMM FX——毎営業日の判定で、証拠金維持率(必要な証拠金に対する、口座のお金の割合)が100%を下回ると追証が出ます。翌営業日の04時59分までに解消しないと、全ポジションが強制決済(マージンカット)されます。これとは別に、維持率が50%以下になればロスカット(損が広がりすぎる前に、業者が取引を自動で決済すること)です
- JFX(MATRIX TRADER)——取引説明書に「マージンコールはありません」とあり、追証の制度が無い側の例です。有効証拠金(口座の今のお金)が、必要証拠金(ポジションを持つのに要る証拠金)を下回ればロスカットです。その判定は、数秒(1〜10秒程度)ごとです
一方の不足金は、どちらの会社にもあります(次の節で見ます)。業者の側から見ると、不足金は未収金(まだ受け取れていないお金)です。
金融庁の有識者検討会の報告書は、これを「相場変動により顧客に証拠金を超える損失(未収金)が発生するリスク」と定義しています。ゼロカットが関わるのは、追証ではなく、この不足金のほうです。
やること:使っている業者の取引説明書で、追証の制度と不足金の扱いを分けて確かめておく。
国内FXで口座がマイナスになったら?

仮の例で見ます。10万円を入れて取引していたところ、相場が急に飛びました。ロスカットでも止まり切らず、決済された後の残高は−5万円です。
この5万円が不足金です。国内では、業者に対する債務(借り)として残ります。
期限の例を見ます。JFXの取引説明書(2026年8月17日現在)では、不足金が出たら2営業日後の15時までに入金する必要があります。
入金がないときは、遅延損害金(払うのが遅れた分の損害金)を申し受ける場合がある、としています。率は年率14.6%で、履行期(払う期限)の翌日からです。
5万円に年率14.6%をそのまま当てはめると、1年分で7,300円、1日あたり20円です(単純な計算の仮の例)。
DMM FXも、ロスカットについて「その損失の額が預入証拠金の額を上回ることがあります」と書いています。
やること:口座がマイナスになったときの入金の期限を、使っている業者の取引説明書で先に確かめておく。
「法律で禁止だから」は本当?

よく見る説明は、「国内のFXにゼロカットが無いのは、金融商品取引法39条が損失補塡を禁じているから」です。損失補塡は、取引で出た損を、業者がお金などで埋めることです。
この決まりは、たしかにあります。ただ、この説明に出典が付いていることは、ほとんどありません。
対象は、有価証券(株など)の売買などの取引と、デリバティブ取引(為替などの値動きをもとにした取引)です。店頭のFXは店頭デリバティブ取引なので、この決まりの範囲に入ります(デリバティブ取引の定義の記事)。
業者がしてはいけないことは、次の3つです。
| いつ | 業者がしてはいけないこと |
|---|---|
| 取引の前 | 「損が出たら、全部か一部を埋めます」と申し込む・約束する |
| 取引の後 | 「出た損を埋めます」と申し込む・約束する |
| 取引の後 | 出た損を埋めるために、お金など(財産上の利益)を実際に出す |
読み落としやすい点が3つあります。
- お客の側も禁じられている——業者に約束をさせることと、埋め合わせを受けることです。ただし、自分から、または第三者を使って求めた場合に限られます
- 罰則がある——業者は3年以下の拘禁刑(刑事施設に入れられる刑)もしくは300万円以下の罰金、またはその両方。法人には3億円以下の罰金。お客は1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方です
- 業者側の「事故」は例外——業者の違法・不当な行為による損の埋め合わせは、禁止から外れます。たとえば、注文の内容を確かめずに取引した、誤認させる勧誘をした、です。過失(不注意)で事務処理を誤った、システムの異常で注文の執行を誤った、なども入ります。相場が飛んで損が膨らんだのは、事故ではありません
事故の5つの種類と、国の確認が要らない11の場合は、システム障害で損をしたら補償されるかで読みました。
では、ゼロカットをこの決まりの言葉と並べてみます。
- 口座を開くときに「証拠金を超えた損は請求しません」と示す——取引の前の「損が出たら埋めると約束する」と重なって見えます
- 相場が飛んだあとで、出た不足金を免除する——取引の後の「出た損を埋めるために、お金などを出す」と重なって見えます
金融庁の検討会の議事録にも、この結び付きが出てきます。第5回(平成30年5月30日)で、事務局は寄せられた意見を紹介しました。そのなかで、「業者が投資家の損失補塡をするゼロカット制度」と呼んでいます。
損失補塡とゼロカットが結び付けられていること自体は、公表資料で確かめられます。
⚠ ただし、ここまでは条文の言葉と重なって見えるというだけです。当方は、金融庁が「ゼロカットは損失補塡の禁止に違反する」と判断を示した文書を確認していません。確認できたのは、次の節の報告書が別の理由を挙げていることです。
やること:「法律で禁止だから」という説明を見たら、出典が付いているかを確かめる。
金融庁の検討会は何と言った?

金融庁の「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」は、平成30年(2018年)2月から6回開かれました。報告書は2018年6月13日に公表されています。
その中に「顧客の損失を限定する規制」という項目があります。書かれているのは、次のことです。
- 海外の例と、導入を求める意見——ドイツとフランスでは、規制(Negative Balance Protection)が導入されている。お客が預けた証拠金を上回る損を、店頭FX業者に負わせる規制だ。日本でも導入を検討すべきだ、という意見があった
- 心配1 無茶な取引が増える——お客は証拠金を上回る損を負わなくてよくなる。そのため、損の可能性を顧みずに、リスクの高い取引をしてしまう(モラルハザード)、という指摘があった
- 心配2 業者がロスカットを起こしたくなる——未収金を負うのを嫌う業者には、ロスカットを発動させる誘因(そうしたくなる理由)が増す。そういう指摘もあった。方法の例は、恣意的な(自分の都合での)スプレッド(売値と買値の差)の拡大など
- 結論——欧州などでの実施状況も踏まえつつ、「なお慎重な検討が必要」
この項目に、損失補塡の禁止への言及はありません。挙げられているのは、お客の行動と業者の行動が、それぞれどう変わるかです。
議事録を読むと、委員の意見は割れていました。第5回では、慎重であるべきだという意見と、将来的には導入を検討すべきだという意見の両方が出ています。
第6回で事務局は、前向きな意見があったことを踏まえて、報告書の末尾の書きぶりを改めたと説明しました。見送りは、全員一致の結論ではありません。
同じ2018年、EUでは欧州証券市場監督機構(ESMA)が、個人向けCFDの措置を発表しています。CFDは、売り買いの差額だけをやり取りする取引です。措置には口座単位のNegative Balance Protectionが含まれます。6月1日に採択し、8月1日から適用する、という内容です。
日本の報告書が「欧州等における実施状況も踏まえつつ」と書いたのは、この時期です。
やること:検討会の結論は「なお慎重な検討が必要」で、全員一致の見送りではなかった、と押さえておく。
ロスカットがあってもマイナスは出る?

国内の決まりは、不足金が出ないように、手前で止めるという設計です。柱は2本あります。
| 柱 | 中身 | いつから |
|---|---|---|
| ロスカットの義務づけ | 個人の通貨関連デリバティブ取引(個人のFXなど)で、業者は、ロスカットのための十分な管理体制を整えていない状況や、ロスカットを行っていないと認められる状況にあってはならない | 2009年8月1日施行(すでにあった業者には2010年2月1日から) |
| 証拠金率4% | 約定(取引が成立すること)の時点と、営業日ごとの一定の時刻に、取引の額の4%以上の証拠金が預けられていなければ、不足分を入れさせないまま取引を続けてはならない | 2010年8月から2%以上(レバレッジ50倍以下)、2011年8月から4%以上(25倍以下) |
たとえば取引の額が100万円なら、証拠金は4万円以上が要ります(仮の例)。レバレッジ(証拠金の何倍まで取引できるか)でいうと、25倍までです。
金融庁の監督指針(業者を監督するときの手引き)も、ロスカットにふれています。「顧客の損失が、顧客が預託する証拠金を上回ることがないように」水準を定めているかを見る、という内容です。
⚠ ただし金融先物取引業協会(FX業者などが入っている業界の団体)は、この項目に注記を付けています。「証拠金を上回る損失が発生する可能性を絶対的に排除するものではありません」。
止める仕組みはある。止まり切らなかった分は、お客の不足金として残る。それが国内の形です。
実際に、協会は会員の業者で出た「ロスカット等未収金」を公表しています。相場が大きく動いた日の速報値は、こうです。
| 日付 | きっかけ(協会の注記) | 件数と金額 |
|---|---|---|
| 2015年1月15日 | スイスフランの相場変動 | 1,229件・33億8,800万円 |
| 2015年8月24日 | 南アフリカランド/円、米ドル/円等 | 4,999件・9億1,900万円 |
| 2019年1月3日 | 為替相場変動 | 6,598件・9億4,300万円 |
| 2021年3月22日 | トルコリラ/円 | 3,458件・13億8,100万円 |
2015年1月15日の内訳は、個人が1,137件・19億4,800万円、法人が92件・14億4,000万円です。個人を1件あたりにならすと、約171万円でした(当方の計算)。
平時の数字も出ています。月次の速報で、2025年9月から2026年8月までの12か月を足しました。個人の未収金は117件・657万4千円です(当方の計算)。ゼロの月(2026年6月)もあれば、45件・534万2千円の月(2026年7月)もあります。
読み方は2つです。
- ふだんは、ほとんど出ない。ロスカットと4%の証拠金が効いている
- 相場が飛んだ日には、1日で数千件、億の単位で出る
やること:ロスカットは「必ず止まる」しくみではない、と知っておく。
海外のゼロカットとはどう違う?

業者に損失補塡を禁じる決まりが相手にしているのは、「金融商品取引業者等」です。日本で登録を受けた金融商品取引業者と、登録金融機関(登録を受けた銀行など)のことです。
登録のない海外業者のゼロカットは、日本の業者規制の外側にある、契約としての取り決めです。
XMTradingの場合、根拠は規約の47.9項(Negative Balance Protection)です。法律が義務づけた保護ではなく、業者が規約で引き受けているものです。適用しないことがある場合も、同じ項に書かれています。
適用されない条件はマイナス残高リセットが適用されない条件に、守られる範囲はゼロカットは何を保証しないかにまとめました。運営会社が日本の登録一覧に見当たらないことは、登録業者一覧の読み方で確かめています。
| くらべる所 | 国内FX | 海外業者のゼロカット |
|---|---|---|
| 損が止まる場所 | 口座の外へ出ていくことがある(不足金) | 口座の中で止まると、規約に書いてある |
| 支えているもの | 法令(ロスカットの義務づけ・25倍まで) | 業者の規約(適用しない場合あり) |
どちらが得か、という話ではありません。止まる場所と、それを支えているものが違います。海外の場合は、その規約と業者を自分で確かめるしかありません。
やること:海外業者のゼロカットは、適用されない条件まで規約を読んでから使う。
まとめ

- ゼロカットが関わるのは追証ではなく不足金(業者から見れば未収金)。国内ではお客の債務として残る
- 仮の例:入金10万円で残高が−5万円なら、その5万円を払う。JFXの取引説明書では2営業日後の15時まで(遅れると年率14.6%の遅延損害金の場合あり)
- 法律は、損失補塡の約束も、補塡そのものも禁じる。求めたお客にも罰則がある(自分から、または第三者を使って求めた場合)。例外は業者側の「事故」だけ
- ゼロカットは、この決まりの言葉と重なって見える。⚠ ただし、金融庁がそう判断した文書を当方は確認していない
- 金融庁の検討会(2018年)は、マイナス分を業者に負わせる規制の導入を「なお慎重な検討が必要」とした。理由はモラルハザードと、業者がロスカットを発動させる誘因。全員一致の見送りではない
- 国内にあるのはロスカットの義務づけと証拠金率4%。それでも2015年1月15日には、1日で33億8,800万円の未収金が出た
- 海外業者のゼロカットは法律ではなく規約。適用されない条件まで読んでから使う
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国内の登録業者を併用する、という選び方
このサイトは海外業者の取引条件を扱っていますが、国内の登録業者を併用するという選択もあります。国税庁タックスアンサー No.1521 の原則では、第一種金融商品取引業者または登録金融機関との店頭デリバティブ取引は申告分離課税で、損失を翌年以後3年に繰り越せます。この線がどこに引かれているかは総合課税の記事に書きました。
- MATRIX TRADER(JFX株式会社/関東財務局長(金商)第238号・第一種金融商品取引業)

- 【DMM FX】(株式会社DMM.com証券/関東財務局長(金商)第1629号・第一種および第二種金融商品取引業)

⚠ 実際にどちらの課税区分になるかは、取引の相手方が第一種金融商品取引業者または登録金融機関かどうかで決まります。上に書いた2社の登録番号と業務の種別は、金融庁「金融商品取引業者登録一覧」(令和8年7月31日現在)で確認しました。登録は取り消されることも、業務の種別が変わることもあります。最新は同じ一覧でご自身で確かめてください。また、国内業者には金融庁の規制により個人口座の最大レバレッジに上限があります。
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出典・注記
- 金融商品取引法 第34条、第38条、第39条、第40条、第198条の3、第200条第14号、第207条第1項第3号(e-Gov法令APIで取得・2026年9月20日)
- 金融商品取引業等に関する内閣府令 第117条第1項第27号・第28号、同条第7項・第8項、第118条、第123条第1項第21号の2・第21号の3(e-Gov法令APIで取得・2026年9月20日)
- 本文と条文の対応:損失補塡の禁止(業者がしてはいけない3つ)=金融商品取引法39条1項1号〜3号/お客の側の禁止=同条2項/事故の例外=同条3項・内閣府令118条/業者の罰則=198条の3、法人の罰金=207条1項3号/お客の罰則=200条14号/「金融商品取引業者等」=34条/ロスカットの義務づけ=40条2号・内閣府令123条1項21号の2・21号の3/証拠金率4%(百分の四)=38条9号・内閣府令117条1項27号・28号、7項・8項/デリバティブ取引の定義=金融商品取引法2条
- 金融庁「『店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会』報告書」(平成30年6月13日公表)。未収金の定義、規制の経緯、「顧客の損失を限定する規制」の項は同報告書による。同検討会 第5回(平成30年5月30日)・第6回(平成30年6月12日)議事録(2026年9月20日閲覧)
- ESMA(欧州証券市場監督機構)2018年6月1日付プレスリリース。個人向けCFDに関する措置の内容と適用開始日は同リリースによる(2026年9月20日閲覧)
- 一般社団法人金融先物取引業協会「ロスカット・ルールの整備・遵守の義務付け」「ロスカット等未収金発生状況」「ロスカット等未収金発生口座数(月次・速報)」(2026年9月20日閲覧)。金額は速報値。12か月の合計と1件あたりの金額は、公表値から当方が計算したもの
- JFX株式会社「取引説明書(MATRIX TRADER 個人のお客様用)」(2026年8月17日現在)第37項・第39項。株式会社DMM.com証券 DMM FX「追加証拠金制度」「ロスカットとは?」「リスク等について」の各ページ(2026年9月20日閲覧)
- XMTradingの規約は、Tradexfin Limited の Client Agreement(Terms and Conditions of Business)第47.9項による(2026年9月20日取得)。正文は英語版です
- 入金10万円・残高−5万円、5万円に年率14.6%をそのまま当てはめた1年分7,300円(1日あたり20円)、取引の額100万円で証拠金4万円は、仮の例です。遅延損害金の実際の計算方法(日数の数え方・端数の扱い)は、本記事では確認していません
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