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買いで持っている取引が含み損(まだ決済していない損)になり、反対の売りも入れようか迷っていませんか。同じ通貨ペアで買いと売りを同時に持つことを「両建て」といいます。FXの両建ては国内では禁止、と聞いたことがある人もいるでしょう。
結論を先に書きます。自分で両建てをすることを禁じる条文はなく、禁じられているのは業者の勧誘です。ただ、両建てにしてもスプレッドなどのコストはかかり、証拠金もゼロにはなりません。金融先物取引業協会の例では、1万米ドルの買いと3万米ドルの売りで12万円です。
両建てってどういう取引?

両建ては、同じ通貨ペアで、買いと売りを同時に持つことです。
たとえば、米ドル/円を1万米ドル買い、同時に1万米ドル売るとします(仮の例)。同じ数量なら、その後の値動きで、片方の利益と片方の損失が打ち消し合います。
買いの側が1万円の得になれば、売りの側は1万円の損になる、という形です(仮の例)。打ち消し合うのは、両建てにした後の値動きです。
つまり、値動きのリスクは止まります。でも、コストは止まりません。どんなコストがかかるかは、4つ目の見出しで見ます。
やること:両建てで止まるのは、その後の値動きの損益だけだと知っておく。
両建ては法律で禁止されているの?

お客さんが自分で両建てをすることを、禁じる条文はありません。禁じられているのは、業者がお客さんに両建てを勧めること(勧誘)です。
決まりは、法律を受けた国のルール(内閣府令)にあります。店頭FXのような、証拠金を預けて行う店頭デリバティブ取引が対象です。業者は、お客さんの取引と「対当する取引」の勧誘や、それに類似する行為をしてはいけません。
「対当する取引」は、条文の中で「損失を減少させる取引」と説明されています。お客さんの取引で出るかもしれない損を減らす取引、という意味です。条文に「両建て」という言葉は出てきません。
金融庁の監督指針が、これを「いわゆる『両建て取引』」と呼んでいます。監督指針は、金融庁が業者を監督するときの考え方をまとめた文書です。
この決まりの主語は、業者とその役員・従業員です。お客さんが自分の判断で両建てをすることを禁じる決まりではありません。店頭FXなどでは、特定投資家(いわゆるプロ)を除くお客さんへの勧誘が対象です。
業者の違反は、法令違反として、業務改善命令や業務停止などの行政処分の理由になりえます(行政処分の記事)。勧誘の決まりには、ほかに電話や訪問による勧誘の禁止などもあります(不招請勧誘の記事)。
やること:日本の登録業者が両建てを勧めるのは、禁じられている行為だと知っておく。
業者が「両建てできます」と言うのは?

金融庁の監督指針が、線引きを示しています。場面ごとに並べると、次のとおりです。
| 場面 | 監督指針の見方 |
|---|---|
| 業者のほうから、お客さんに両建てを勧める | 禁じられている勧誘(勧誘やそれに類似する行為をしていないか、を見る) |
| お客さんが自分から「両建てをしたい」と言った、または「できますか」と聞いた | 「できます」と答えることは、直ちに禁じられた行為に当たるものではない |
| デメリットに触れずに、「できます」と書いたり表示したりする | 勧誘に「類似する行為」に当たる |
触れるべきデメリットとして、監督指針は次のようなものを挙げています。
- 手数料が二重にかかること
- スワップポイントで逆ざや(受け取るより払うほうが多い状態)が生じるおそれがあること
- 売値と買値の差(業者の受け取るスプレッド)を、お客さんが二重に負担すること
こうした点などから、経済合理性を欠くおそれがある取引だ、という説明です。損得の面で筋が通らないおそれがある、という意味です。
やること:業者の説明に「両建てできます」とあれば、コストの説明も一緒に書いてあるかを見る。
両建て中もお金はかかるの?

かかります。値動きの損益は打ち消し合っても、コストは止まりません。主なものは次の3つです。
- スプレッド(売値と買値の差)=建てるときと決済するときに、買いと売りの両方で負担する
- スワップポイント(取引を持っている間に受け取ったり払ったりするお金)=受け取る側より支払う側の額が大きく設定されていると、持っている間、差額を払い続ける(スワップの記事)
- 手数料=取引手数料がかかる業者なら、買いと売りの両方にかかる
仮の例で数えてみます。買いだけなら100円のスプレッドの負担が、両建てでは売りの分も加わって200円になります。
スワップは、1日分の受け取りが80円、支払いが100円だとします。差の20円を払うことになり、30日持てば600円です(仮の例)。
30日持ってから両方を決済すると、合わせて800円です(手数料を除いた仮の例)。各社の実際の金額は、この記事では確認していません。
やること:両建てにする前に、スプレッド・スワップの差・手数料が、持つ日数でいくらになるかを数える。
両建てで証拠金はいくら要るの?

ゼロにはなりません。証拠金は、取引のために業者に預けるお金です。個人のFXの証拠金は、取引の額の4%以上です(レバレッジ上限の記事)。
両建てのときの計算は、金融先物取引業協会が説明しています。同じ通貨ペアで、売りと買いの両方の建玉(持っている取引)がある場合です。その部分は、多いほうの取引の額を基準に必要証拠金を計算できます。
協会の例を見てみます。米ドル/円を100円03銭で1万米ドル買い、100円00銭で3万米ドル売っている場合です。
| 建玉 | 取引の額 |
|---|---|
| 買い 1万米ドル(100円03銭) | 100万300円 |
| 売り 3万米ドル(100円00銭) | 300万円(多いほう) |
| 必要証拠金 | 300万円×4%=12万円 |
ユーロ/円の買いと、ユーロ/米ドルの売りを持っていたとします。これを「米ドル/円の買い」とみなして計算するような方法は認められません。同じ通貨ペアで、対当する建玉がある場合に限ります。
やること:両建てでも、多いほうの取引の額の4%以上は証拠金に要ると見ておく。
国内の業者や海外業者はどう扱う?

当サイトが広告を掲載している国内の2社は、説明書で次のように書いています。
| 業者 | 両建てについての説明 |
|---|---|
| DMM FX(株式会社DMM.com証券) | 両建て取引は可能。スワップのスプレッドによる逆ざや、反対売買時のスプレッドの二重負担などで経済合理性を欠く取引なので勧めない。お客さん自らの意思で取引してほしい(店頭外国為替証拠金取引説明書) |
| JFX株式会社 | 両建てはできる。スワップの差やスプレッドによるコストがあり、推奨していないが、お客さん自身の判断で選択できる仕様(リスクの説明) |
どちらも、監督指針のいうデメリットに触れたうえで「できる」と書く形になっています。
海外業者はどうでしょうか。両建ての勧誘を禁じる決まりは、日本の登録を受けた業者がしてはいけないことです。日本の登録を受けていない海外業者には、この決まりもかかりません。
XMTradingの口座タイプの仕様では、両建ては「あり」とされています(XMの口座タイプの記事)。
マイナス残高リセットは、口座の残高がマイナスになったときの仕組みです。この仕組みには、対象から外れる場合(適用除外)があります。
「複数口座での両建て」などが適用除外に当たるかどうかは、規約に基準が書かれていません。当サイトの記事でも判断していません(マイナス残高リセットの条件の記事)。
やること:海外業者を使っているなら、マイナス残高リセットの条件の記事もあわせて読んでおく。
まとめ

- お客さんが両建てをすることを禁じる条文はない。禁じられているのは業者の勧誘
- 条文の言葉は「対当する取引(損失を減少させる取引)」。金融庁の監督指針が「両建て取引」と呼ぶ
- お客さんの申し出や問い合わせに「できる」と答えるのは直ちに違反ではない。デメリットに触れずに表示すると、勧誘に類似する行為に当たる(監督指針)
- コストはスプレッドの二重負担・スワップの逆ざや・手数料。値動きは止まってもコストは止まらない(手数料を除く仮の例では30日で800円)
- 証拠金は、同じ通貨ペアなら多いほうの取引の額が基準(協会の例で12万円)。ゼロにはならない
- DMM FXとJFXは、できるが勧めないと説明している
- 日本の登録を受けていない海外業者には、この決まりはかからない。複数口座での両建てがマイナス残高リセットの適用除外に当たるかは、規約に基準がなく、当サイトでも判断していない
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国内の登録業者を併用する、という選び方
このサイトは海外業者の取引条件を扱っていますが、国内の登録業者を併用するという選択もあります。国税庁タックスアンサー No.1521 の原則では、第一種金融商品取引業者または登録金融機関との店頭デリバティブ取引は申告分離課税で、損失を翌年以後3年に繰り越せます。この線がどこに引かれているかは総合課税の記事に書きました。
- MATRIX TRADER(JFX株式会社/関東財務局長(金商)第238号・第一種金融商品取引業)

- 【DMM FX】(株式会社DMM.com証券/関東財務局長(金商)第1629号・第一種および第二種金融商品取引業)

⚠ 実際にどちらの課税区分になるかは、取引の相手方が第一種金融商品取引業者または登録金融機関かどうかで決まります。上に書いた2社の登録番号と業務の種別は、金融庁「金融商品取引業者登録一覧」(令和8年7月31日現在)で確認しました。登録は取り消されることも、業務の種別が変わることもあります。最新は同じ一覧でご自身で確かめてください。また、国内業者には金融庁の規制により個人口座の最大レバレッジに上限があります。
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XMTradingはTradexfin Limitedのブランドで、セーシェル金融サービス庁の規制を受けており、日本の金融庁の登録は受けていません(金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」に掲載)。デリバティブ取引には投資元金を失うリスクがあります。
出典・注記
- 金融商品取引業等に関する内閣府令 第117条第1項第26号、金融商品取引法 第38条(e-Gov法令APIで取得・2026年9月24日)
- 本文と条文の対応:両建ての勧誘の禁止=内閣府令117条1項26号(金融商品取引法38条9号が、業者の禁止行為の一部を内閣府令に委ねている)/決まりの主語=金融商品取引法38条の「金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人」(本文では「業者とその役員・従業員」と書いています)/店頭FXなどの店頭金融先物取引では、特定投資家を除く顧客が対象
- 金融庁「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」IV-3-3-2(勧誘・説明態勢)(4)「両建て取引」(2026年9月24日取得)
- 一般社団法人金融先物取引業協会「個人顧客を相手方とするFX取引に係る証拠金規制」の「両建取引等について」(2026年9月20日取得)
- 株式会社DMM.com証券「店頭外国為替証拠金取引説明書」の「両建」の項、JFX株式会社のリスクの説明の「両建のリスク」の項(いずれも2026年9月21日取得)
- 米ドル/円1万米ドルの買いと売り・値動きの損益1万円、スプレッドの負担100円・200円、スワップの受け取り80円・支払い100円・差20円(1日分)、30日で600円、合計800円は、当サイトで置いた仮の例です。実在の業者の数値ではありません。必要証拠金12万円の例は金融先物取引業協会の例です
- 業者が「勧誘に類似する行為」をしたかどうかの個別の判断、両建てにかかる各社の具体的なコストの金額は、本記事では確認していません
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本記事は法令と公表資料の一般的な解説であり、法的助言や投資判断、特定の取引・業者の利用を勧誘するものではありません。記載は執筆時点の公開情報に基づきます。
