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FX業者を比べるページには、よく「自己資本規制比率」が並んでいます。「1415.9%」と「264.5%」を見て、高い方が安全なのか迷っていませんか。この記事では、FX業者が毎月出す「未カバー率」もあわせて読みます。
結論を先に書きます。この比率は、会社のお金が、起こりうる損の何倍あるかを%で表した数字です。法律は120%以上に保つよう求めていますが、比率の高い順が、そのまま安全な順ではありません。たとえば2026年6月末は、JFXが1415.9%、DMM.com証券が264.5%です。でも、この差はそのまま安全さの差ではありません。
自己資本規制比率って何の数字?

ひとことで言うと、「会社のお金÷起こりうる損」を%で表した数字です。法律の言葉では、自己資本から固定的な資産を控除した(差し引いた)額を、発生し得る危険に対応する額で割ったものです。
割られる数(分子)は「固定化されていない自己資本」です。土台は「基本的項目」で、資本金・資本剰余金・利益剰余金(これまでの利益の積み立て)などです。
そこに「補完的項目」として、劣後債務(ほかの借金より返す順番が後になる借入れ)などを上限つきで足します。最後に、固定資産などの「控除資産」を引きます。
割る数(分母)は「リスク相当額」です。次の3つの危険に相当する額を合わせたものです。
- 市場リスク相当額=持っている資産や取引の値動きで起こりうる危険
- 取引先リスク相当額=取引の相手が契約を守らないこと(契約不履行)で起こりうる危険
- 基礎的リスク相当額=事務のミスなど、ふだんの業務の中で起こりうる危険
たとえば、会社のお金が300、リスク相当額が100なら、300÷100で300%です。リスク相当額が同じ100で、会社のお金が120なら120%です(どちらも仮の例)。
分母の具体的な計算方法は、金融庁長官が定めることになっています。その中身は、本記事では確認していません。なお、市場リスクと取引先リスクは、営業日ごとに把握することになっています。
この比率の決まりがかかるのは、「第一種金融商品取引業」を行う業者です。第一種は、業者の登録の種類の1つです。FX業者は、この第一種に入ります(登録業者一覧の読み方)。
やること:比べるページで比率を見たら、「会社のお金が、起こりうる損の何倍あるか」と読み替える。
何%を下回るとまずいの?

業者が保たなければならない線は、法律で120%と決まっています。法律には、こう書かれています。「自己資本規制比率が百二十パーセントを下回ることのないようにしなければならない。」
法律の本文に出てくる線は、120%と100%です。ところが、法律にもとづく細かいルール(内閣府令)は、もう1本140%の線を引いています。
| 線 | 決めているもの | その線を下回ると |
|---|---|---|
| 140% | 内閣府令 | 直ちに金融庁長官へ届け出る。その後は営業日ごとに届出書を出す |
| 120% | 法律 | 「下回ることのないようにしなければならない」線。当局(業者を監督する役所)が命令を出すことができる(次の節) |
| 100% | 法律 | 当局が業務の停止を命じることができる(次の節) |
140%以上に戻ったら、そのことも遅れずに届け出ます。つまり140%は、日々の監視が始まる線です。120%を割る前に、当局は毎日の数字を受け取っています。
たとえば比率が130%なら、120%の線より上でも、140%は割っています。毎営業日の届出が続く段階です(仮の例)。
ふだんの届出もあります。毎月末の比率は、翌月20日までに届け出ます。そのうえ毎営業日、比率の状況を適切に把握することも求められています。月に1回だけ計算すればよい数字ではありません。
さらに、四半期(3か月)の末日の比率は書面にします。その書面は、末日から1か月たった日から3か月間、すべての営業所に置かれます。誰でも見られるようにするためです(縦覧)。
やること:比率を見たら、まず140%と120%の線より上かどうかを確かめる。
比率が下がると会社はどうなる?

120%を割ると、当局が業者に命令を出せるようになります。比率が下がるほど、当局ができることが重くなります。対象は、第一種金融商品取引業を行う業者に限られます。
| 比率 | 当局ができること |
|---|---|
| 120%未満 | 業務の方法の変更、財産の供託(財産を決められた所に預けさせること)その他、監督上必要なことを命じることができる |
| 100%未満 | 3か月以内の期間を決めて、業務の全部または一部の停止を命じることができる |
| 停止から3か月たっても100%未満で、回復の見込みがない | 業者の登録を取り消すことができる |
業者の側は、140%を下回ってからの届出書に計画書を付けます。140%未満なら比率を維持するための計画書、120%未満なら比率を回復させるための計画書です。
大事なのは、どれも「できる」という決まりだということです。登録の取消しも「取り消すことができる」という定めです。
命令は「公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に出すものです。世の中やお客さんを守るために必要で適当だと、当局が認めたとき、という意味です。
つまり、線を割ったら自動的に止まる、というわけではありません。ただ、140%・120%・100%の3本の線と、その先の段取りは、法律と内閣府令で決まっています。知っておいてよいしくみです。
業者が止まったとき、お客さんの資産がどう扱われるかは、信託保全の記事で読みました。この命令のほかにも、業務改善命令や、業務停止・登録取消しの決まりがあります。処分の種類と公表のされ方は、行政処分の記事にまとめました。
やること:「線を割ったらすぐ止まる」と思い込まない。業者が止まったときのお金の扱いは、信託保全の記事で確かめておく。
1415.9%と264.5%はどちらが安全?

比率の大きさだけでは決められません。1415.9%と264.5%を見て「5倍安全」と読むのは早とちりです。割る数(分母)の中身が違うからです。
当サイトが広告を掲載している2社の、2026年6月末の開示から抜き出しました(2026年9月23日取得)。
| 単位:百万円 | JFX株式会社 | 株式会社DMM.com証券 |
|---|---|---|
| 会社のお金(固定化されていない自己資本) | 3,298 | 55,740 |
| 起こりうる損(リスク相当額) | 232 | 21,068 |
| うち値動きの危険(市場リスク相当額) | 0 | 13,211 |
| うち事務などの危険(基礎的リスク相当額) | 231 | 3,583 |
| 自己資本規制比率 | 1415.9% | 264.5% |
JFXは、値動きの危険(市場リスク相当額)が0です。分母のほぼ全部が、事務などの危険(基礎的リスク相当額・231百万円)です。
同社は、FXのリスク開示で「全取引フルカバー」と書いています(次の節)。自分で相場の変動を抱えない事業の形が、分母の数字にも表れていると読めます。
DMM.com証券は、FXのほかに株式やCFDなども扱う証券会社です。値動きの危険(市場リスク相当額)が132億円あります。
割られる数(分子)の側では、劣後債務などの「補完的項目」が270億円あります。書面には、その中身として劣後債務が6件・合計267億円と注記されています。劣後債務は、上限つきで補完的項目に足すことが認められているものです。
どちらも、120%を大きく上回っています。JFXは自社のページで、この比率を「金融商品取引業者の財務の健全性を測る重要な財務指標」と説明しています。
比率は、その時点の自己資本とリスクの比です。業務の範囲が違えば、リスク相当額の中身も違います。2社を並べて優劣を決める数字ではありません。
120%・140%の線からどれだけ離れているかを見る数字として読むのが、法律や内閣府令の作りに沿った読み方です。
もう1つ、大事な注意があります。この比率は、それだけで業者の破綻の可能性や、お客さんの資産の安全を示すものではありません。お客さんの証拠金の保全(守っておくこと)は、信託保全などの別のしくみによります。
やること:比率を比べるときは、何%かよりも「線からどれだけ上か」と、その会社が何を扱っているかを見る。
毎月出る「未カバー率」は何の数字?

FX業者には、もう1つ毎月の開示があります。取引所を通さないFX(店頭FX)には、毎月の決まった時点の3つの数字についての決まりがあります。この3つを翌月20日までに公表しないまま、お客さんと契約を結ぶことは禁じられています。
その前に、言葉を1つ。カバー取引は、お客さんとの取引で業者が抱えた分を、別の相手との取引で打ち消すことです。
- 未カバー率=お客さんの売りと買いを打ち消し合っても残った分のうち、カバー取引をしていない割合
- カバー取引の状況=カバー取引の額を、市場ごと、または相手の信用格付ごとに分けた割合。信用格付は、会社の信用の度合いを記号で表したもの
- 平均証拠金率=お客さんの建玉(持っているポジション)の額に対する、実際に預けられている証拠金の割合
たとえば、打ち消し合っても残った額が10だとします。そのうち4をカバーしていなければ、未カバー率は40%です(仮の例)。2社の実際の数字は、次のとおりです。
| 2026年8月31日 | JFX | DMM.com証券 (DMM FXとTOSSY FXの合算) |
|---|---|---|
| 未カバー率 | 0%(全取引フルカバーと表示) | 39% |
| カバー取引の状況 | 格付あり 100% | BBB以上 98%/BBB未満 0%/格付なし 2% |
| 平均証拠金率 | 17.8% | 14% |
2社とも、数字の意味を自社のページに書いています。
- カバーされていないポジションは、為替相場の変動の影響を直接受ける
- カバー取引先が破綻すると、再構築コスト等が発生する(取引を組み直す費用などがかかる)
- 証拠金率が低いと、顧客未収金リスクが大きくなる(お客さんから受け取れないお金が残るおそれ)
未カバー率は、23時・25時・27時(翌日の午前1時・3時)のうち、未カバーの額が最大になる時点で測っています。DMMの未カバー率は月によって動いていて、同じ年の1月〜8月末は28%〜54%でした。
カバー取引の相手の名前そのものは、口座開設の前に渡される書面に載っています(口座開設の書面の記事)。毎月の3つの数字と、書面の相手の一覧。この2つを合わせると、業者がどこまで自分でリスクを抱えているかが見えてきます。
やること:口座を作る前に、業者のページで毎月の3つの数字と、書面にあるカバー取引の相手を見ておく。
海外業者にもこの数字はある?

日本の決まりは及びません。120%の線も、当局の命令も、毎月の3つの数字の公表も、日本の登録を受けた業者に向いた決まりです。XMのような海外業者には及びません(無登録営業の条文と罰則)。
では、XMの運営会社は、登録している国の当局から、どのような資本の規制を受けているのか。それが開示されているのか。どちらも本記事では確認していません。
運営会社の整理は、運営会社と規制当局の記事にあります。
やること:120%の線や毎月の3つの数字は、日本の登録業者についての決まりだと覚えておく。
まとめ

- 自己資本規制比率は、会社のお金(自己資本から固定資産などを引いた額)÷起こりうる損(リスク相当額)。分母は値動き・取引先・事務などの3つの危険
- FX業者(第一種)は、比率を120%以上に保つ。毎月末の比率を翌月20日までに届け出、四半期末の比率は3か月間、営業所で誰でも見られるようにする(縦覧)
- 140%を下回ったら直ちに届け出、以後は営業日ごとに届出書と計画書
- 120%未満で業務方法の変更などの命令、100%未満で3か月以内の業務停止、回復しなければ登録取消し。どれも「できる」の定めで、線を割ったら自動で止まるわけではない
- 2026年6月末=JFX 1415.9%・DMM.com証券 264.5%。差は事業の形の差が大きく、優劣の順位ではない。線からどれだけ離れているかで読む
- FX業者は毎月、未カバー率・カバー取引の状況・平均証拠金率を公表する
- 海外業者には、120%の線も毎月の3つの数字の公表も、日本の決まりは及ばない(海外の当局の資本の規制と開示は、本記事では未確認)
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国内の登録業者を併用する、という選び方
このサイトは海外業者の取引条件を扱っていますが、国内の登録業者を併用するという選択もあります。国税庁タックスアンサー No.1521 の原則では、第一種金融商品取引業者または登録金融機関との店頭デリバティブ取引は申告分離課税で、損失を翌年以後3年に繰り越せます。この線がどこに引かれているかは総合課税の記事に書きました。
- MATRIX TRADER(JFX株式会社/関東財務局長(金商)第238号・第一種金融商品取引業)

- 【DMM FX】(株式会社DMM.com証券/関東財務局長(金商)第1629号・第一種および第二種金融商品取引業)

⚠ 実際にどちらの課税区分になるかは、取引の相手方が第一種金融商品取引業者または登録金融機関かどうかで決まります。上に書いた2社の登録番号と業務の種別は、金融庁「金融商品取引業者登録一覧」(令和8年7月31日現在)で確認しました。登録は取り消されることも、業務の種別が変わることもあります。最新は同じ一覧でご自身で確かめてください。また、国内業者には金融庁の規制により個人口座の最大レバレッジに上限があります。
当サイトはA8.netのアフィリエイトプログラムに参加しており、上記リンク経由の口座開設・取引で当サイトに報酬が発生します。本記事は特定の業者の利用を勧誘するものではありません。取引条件・税制は変更されることがあります。
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XMTradingはTradexfin Limitedのブランドで、セーシェル金融サービス庁の規制を受けており、日本の金融庁の登録は受けていません(金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」に掲載)。デリバティブ取引には投資元金を失うリスクがあります。
出典・注記
- 金融商品取引法 第46条の6、第53条(e-Gov法令APIで取得・2026年9月20日)
- 金融商品取引業等に関する内閣府令 第176条〜第180条(同・2026年9月20日)、第117条第1項第28号の2(e-Gov法令APIで取得・2026年9月23日)
- 本文と条文の対応:比率の定義、毎月末と内閣府令で定める場合の届出(届出先は法律では内閣総理大臣)=金融商品取引法46条の6第1項/120%を下回らないようにする義務=同条2項/四半期末の比率の縦覧=同条3項。46条の6は、同法の「経理」の節のうち「第一種金融商品取引業を行う金融商品取引業者」の款に置かれています
- 本文と条文の対応(続き):140%を下回った場合と140%以上に回復した場合の届出=内閣府令179条1項(46条の6第1項の「内閣府令で定める場合」)/毎月末の比率を翌月20日までに届出=同条2項/営業日ごとの届出書=同条3項/維持・回復の計画書=同条4項/回復の届出=同条5項/毎営業日の把握=同条6項
- 本文と条文の対応(続き):120%未満の命令・100%未満の業務停止・登録(29条の登録)の取消し=金融商品取引法53条1項〜3項/業務改善命令=同法51条、業務停止・登録取消し=同法52条/分子と分母の中身=内閣府令176条〜178条(劣後債務を上限つきで補完的項目に算入=176条、市場リスクと取引先リスクを営業日ごとに把握=178条2項)、劣後債務の注記=180条3項/毎月の3つの数字の公表=内閣府令117条1項28号の2
- JFX株式会社「自己資本規制比率等の開示」(2026年6月末の比率と内訳)、「店頭FX取引に係るリスク情報に関する開示」(計測日2026年8月31日)(いずれも2026年9月23日取得)
- 株式会社DMM.com証券「財務状況等」の「自己資本規制比率の状況(2026年6月末)」、「店頭FX取引に係るリスク情報に関する開示」(計測日2026年8月31日ほか)(いずれも2026年9月23日取得)
- 2社の表は、各社の開示から一部の行を抜き出したものです。省いた行(単位:百万円):基本的項目=JFX 3,396・DMM.com証券 36,710(DMM.com証券は「自己資本額」と表記)/補完的項目=JFX -・DMM.com証券 27,008/控除資産=JFX 97・DMM.com証券 7,978/取引先リスク相当額=JFX 1・DMM.com証券 4,273
- 「会社のお金」「起こりうる損」「値動きの危険」「事務などの危険」は、固定化されていない自己資本・リスク相当額・市場リスク相当額・基礎的リスク相当額を、当サイトでやさしく言い換えたものです。「翌日の午前1時・3時」は当サイトで書き添えたものです
- 会社のお金300・120、リスク相当額100、比率130%、未カバーの額10のうち4は、説明のための仮の例です
- リスク相当額の具体的な計算方法(金融庁長官の定め=告示)、監督指針の記述は、本記事では確認していません
- 自己資本規制比率は、業者の破綻の可能性や顧客資産の安全性をそれだけで示すものではありません。顧客の証拠金の保全は、信託保全などの別の仕組みによります
- 本記事には、当サイトが広告を掲載している業者(JFX株式会社・株式会社DMM.com証券)が含まれます。記載は各社の公表資料によるもので、優劣を示す趣旨ではありません
本記事は公表資料と法令の一般的な解説であり、投資判断や特定の業者の利用を勧誘するものではありません。記載は執筆時点の公開情報に基づきます。
