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FXの取引画面が固まった。注文が通らなかった。あり得ない価格で約定(取引が成立すること)した——。こんなシステム障害で損をしたら、業者に補償してもらえるのでしょうか。
結論を先に書きます。相場の動きで出た損を埋めてもらう「損失補塡」は、たとえ3万円(仮の例)でも法律で禁じられています。例外は業者の側に原因がある「事故」だけで、業者のシステムの異常で注文の執行を誤ったことも、その1つです。ただし、障害が起きれば必ず補償される、という意味ではありません。
相場で出た損は埋めてもらえる?

埋めてもらえません。法律(金融商品取引法)が、損失補塡を禁じています。損失補塡は、取引で出た損を、業者がお金などで埋めることです。
対象には、株などの売買のほか、店頭のFXやCFDも入ります。業者がしてはいけないことは、次の3つです。
| いつ | 業者がしてはいけないこと |
|---|---|
| 取引の前 | 「損が出たら、全部か一部を埋めます」と申し出る・約束する |
| 取引の後 | 「出た損を埋めます」と申し出る・約束する |
| 取引の後 | 出た損を、実際に埋める |
たとえば、相場が逆に動いて3万円の損が出たとします(仮の例)。前もって約束していなくても、あとから業者が埋めれば違反です。
業者への罰則は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方です。拘禁刑は、刑事施設に入れられる刑です。業者が法人(会社など)なら、法人にも3億円以下の罰金です。
「国内のFXにはゼロカットが無い」という話も、この禁止とよく結びつけて語られます。くわしくはゼロカットの記事にまとめています。
やること:相場の動きで出た損は戻らない、と知ったうえで取引する。
「損したら埋めて」と頼むとどうなる?

頼んだ側も、違反になりえます。この禁止は、業者だけでなく、顧客(取引をするお客)にも向いているからです。
顧客がしてはいけないのは、次の3つです。相手には、業者のほか第三者(業者以外の人)も含みます。
- 取引の前に、「損が出たら埋める」という約束をする
- 取引の後に、「出た損を埋める」という約束をする
- 埋め合わせとして、お金などを受け取る
ただし、違反になるのは自分から求めたときだけです。ほかの人を通して求めた場合も含みます。業者が勝手に申し出てきただけなら、顧客の違反にはなりません。
罰則は、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方です。顧客が法人なら、法人にも1億円以下の罰金です。
さらに、受け取ったお金などは没収されます。没収できないときは、その分の金額を追徴(代わりにお金で納めさせること)されます。
たとえば、相場の損3万円を埋めてほしいと自分から求め、受け取ったとします(仮の例)。その3万円は没収の対象です。「損をしたら埋めてくれるなら取引する」と持ちかけて約束させた時点でも、違反になりえます。
やること:相場の損を埋めてほしいと、自分から持ちかけない(障害のときの申し出方は、このあとの節で)。
システム障害なら埋めてもらえる?

業者の側に原因があれば、例外の「事故」に当たりえます。事故による損なら、業者への禁止は外れます。顧客の側の禁止も、同じように外れます。
事故とは、業者やその役員・社員の、違法または不当な行為です。そのうち、業者と顧客の争いの原因になるもので、国の細かい決まり(内閣府令)が挙げたものに限られます。
ポイントは2つです。原因が業者の側の違法・不当な行為であること。そして決まりに挙げられたものに限られること。
相場が予想と逆に動いた、というだけの損は、どちらにも当たりません。決まりに挙げられているのは、次の5つです。業者の代表者や社員などが、仕事の中でこれをして顧客に損をさせた場合です。
- 注文の内容を確認しないで、取引をした
- 商品の性質や取引の条件、値上がり・値下がりなどについて、誤解させる勧誘をした
- 注文の執行(注文を実際の取引にすること)で、不注意で事務処理を誤った
- システムの異常で、注文の執行を誤った
- そのほか、法令に違反することをした
システム障害は4つめです。どれも主語は、業者の側の人とシステムです。自分のスマホやパソコン、回線の不具合は、この文言には入っていません。
たとえば、画面が固まって3万円の損が出たとします(仮の例)。原因が業者のシステムで注文の執行を誤ったのなら、事故に当たりえます。ただし、事故に当たるかどうかは事実関係によります。
法律が決めているのは、「事故なら、決まった手続で埋めても違反にならない」ということです。障害が起きれば必ず補償される、という意味ではありません。
やること:損が出たら、業者のシステムか、自分のスマホや回線か、どちらの不具合かを分かる範囲で確かめておく。
業者は自由に補償できるの?

自由にはできません。事故でも、取引の後に埋めるときは、原則として国の確認が要ります。
取引の後に「埋めます」と申し出る・約束するときや、実際に埋めるときのことです。業者は前もって、損が事故によるものだという確認を、国(内閣総理大臣)から受けておきます。
確認の申請書は、事故が起きた営業所を受け持つ財務局長に出します。書くことも決まっていて、顧客の氏名と住所、事故の概要、損が事故による理由、埋める額などです。つまり、理由と金額を書面にして国に見せる手続です。
ただし、確認が要らない場合も、決まりに11個挙げられています。分けると、次のとおりです。
| どんなとき | 確認が要らない場合(要旨) |
|---|---|
| 裁判や調停で決まった | 確定判決・裁判上の和解・民事調停が成立している |
| 話し合いの場で決まった | FINMACなどの手続による和解、協会や弁護士会などでのあっせんなど |
| 専門家が事故と確かめた | 弁護士・司法書士が代理した和解や、協会の委員会の確認で、支払いが1,000万円以下(条件つき) |
| 額が小さい | 事故の損について、1日の取引で埋める額が100万円相当以下 |
| 記録で明らか | 事務処理の誤りやシステムの異常が、帳簿や注文の記録から事故と明らか |
システム障害にいちばん関係するのは、最後の「記録で明らか」です。記録で明らかなら、業者は国の確認を待たずに埋めることができます。小さな額なら、「1日100万円相当以下」でも確認が要りません。
ただし、確認なしに埋めたあとで、報告が要る場合があります。協会の委員会の確認・額が小さい・記録で明らか、の3つです。
この3つのときは、業者は埋めた月の翌月末日までに、財務局長に報告しなければなりません。たとえば10月に埋めたなら、11月末日までです(仮の例)。
やること:障害のときに備えて、自分の側でも記録を残せるようにしておく(次の節)。
障害が起きたら何を残せばいい?

残すのは、日時・画面・注文の内容の3つです。画面は、スクリーンショットなどで残します。そのうえで、まず業者に申し出ます。
業者と話がつかなければ、FINMACがあります。証券・FXの「指定紛争解決機関」(争いを裁判の外で解決する手続を行う機関)です。あっせん(間に入って話をまとめること)で和解する道があります。
FINMACでの和解による支払いは、前の節の「確認が要らない場合」に入ります。くわしくは金融ADRとFINMACの記事にまとめています。
業者の書面も見てみます。当サイトが広告を掲載している、DMM.com証券の「店頭外国為替証拠金取引説明書」です(2026年9月21日取得)。ここに「約定の訂正等」という項があります。
業者のシステム障害や、カバー先のレートの誤配信などで、本来あるべき価格で約定しないことがあります。カバー先は、業者がお客との取引に合わせて、自分も取引をする相手です。すると、本来は出なかったはずの利益や損が出る可能性があります。
その場合は「本来あるべき価格での約定に訂正させていただく又は約定の取消しをさせていただく場合があります」と書かれています。損を後から埋めるのではなく、約定そのものを直す、または取り消すという書き方です。利益が出ていた場合も対象になります。
同じ説明書は、ロスカットにも触れています。ロスカットは、損が膨らんだときの自動の決済です。システム障害などで予定どおり行われないと、想定以上の損が出るおそれがある、という内容です。
証拠金(取引のために預けたお金)を超える損が出るおそれも書かれています。そのうえで、原因が業者の責めに帰することができない事由なら、免責とすることがある、としています。業者のせいとはいえない理由なら、責任を負わないことがある、という意味です。
約定の訂正・取消しが、損失補塡の禁止の上でどう位置づけられるかは、本記事では確認していません。
やること:障害に気づいたら、日時・画面・注文の内容を残して、まず業者へ。話がつかなければFINMACへ。
「元本保証」の誘いは信じていい?

SNSで「元本保証」「損失は補塡します」と誘ってくる相手がいます。損失補塡の禁止が向いているのは、登録を受けた業者とその顧客です。登録のない相手は、この禁止の枠の外にいます(無登録営業の条文と罰則)。
相手が登録を受けているかは、登録業者一覧の読み方で確かめられます。
登録のない相手に向いているのは、出資法という別の法律です。相手を限らない大勢の人に「あとで全額か、それ以上を払い戻す」と示して、出資金を受け入れてはいけません。はっきり言う場合も、それとなく示す場合も含みます。
この決まりは「誰であっても」です。登録があるかどうかは関係ありません。違反は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方です。
ただし、詐欺罪が成り立つ場合など、刑法に当てはまる定めがあるときは別です。出資法のこの部分は適用しない、とされています。
たとえば「10万円から元本保証」という投稿を見たとします(仮の例)。相手が登録業者でも、広く出資を募る登録のない相手でも、「損はさせない」は法律が禁じている約束です。電話やSNSで来る勧誘そのものの決まりは、不招請勧誘の記事に書きました。
やること:「元本保証」「損は埋めます」と言われたら、禁じられた約束だと思い出し、相手の登録を一覧で確かめる。
まとめ

- 相場の動きで出た損は、埋めてもらえない。業者が埋めるのも、約束するのも違反(3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方)
- 自分から求めて約束させた・受け取った顧客も違反。1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方。受け取ったお金などは没収・追徴。業者が勝手に申し出ただけなら違反にならない
- 例外は、業者の側に原因がある「事故」だけ。決まりが5つに限っていて、システムの異常で注文の執行を誤ったことはその1つ。自分のスマホや回線の不具合は、文言に入っていない
- 事故でも、取引の後に埋めるには、原則として国の確認が要る。障害なら必ず補償される、という意味ではない
- 確認が要らない場合は11個。FINMACなどでの和解、1日100万円相当以下、記録で明らかな事務の誤り・システムの異常など。委員会・少額・記録の3つは翌月末日までに報告
- 登録のない相手の「元本保証」は出資法が禁じている(誰であっても・3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方)
- 障害が起きたら、日時・画面・注文の内容を残して、まず業者に申し出る。話がつかなければFINMAC
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国内の登録業者を併用する、という選び方
このサイトは海外業者の取引条件を扱っていますが、国内の登録業者を併用するという選択もあります。国税庁タックスアンサー No.1521 の原則では、第一種金融商品取引業者または登録金融機関との店頭デリバティブ取引は申告分離課税で、損失を翌年以後3年に繰り越せます。この線がどこに引かれているかは総合課税の記事に書きました。
- MATRIX TRADER(JFX株式会社/関東財務局長(金商)第238号・第一種金融商品取引業)

- 【DMM FX】(株式会社DMM.com証券/関東財務局長(金商)第1629号・第一種および第二種金融商品取引業)

⚠ 実際にどちらの課税区分になるかは、取引の相手方が第一種金融商品取引業者または登録金融機関かどうかで決まります。上に書いた2社の登録番号と業務の種別は、金融庁「金融商品取引業者登録一覧」(令和8年7月31日現在)で確認しました。登録は取り消されることも、業務の種別が変わることもあります。最新は同じ一覧でご自身で確かめてください。また、国内業者には金融庁の規制により個人口座の最大レバレッジに上限があります。
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出典・注記
- 金融商品取引法 第39条、第198条の3、第200条第14号、第200条の2、第207条第1項第3号・第5号(e-Gov法令APIで取得・2026年9月20日)
- 金融商品取引業等に関する内閣府令 第118条、第119条、第120条、第121条(e-Gov法令APIで取得・2026年9月20日)
- 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律 第1条、第8条(e-Gov法令APIで取得・2026年9月23日)
- 株式会社DMM.com証券「店頭外国為替証拠金取引説明書」の「約定の訂正等」の項、およびロスカットに関する注記(2026年9月21日取得)
- 本文と条文の対応:損失補塡の禁止=金融商品取引法39条(見出し「損失補塡等の禁止」)。業者の3つの禁止=39条1項1号〜3号(対象は「有価証券の売買その他の取引」と「デリバティブ取引」)、業者の罰則=198条の3、法人の罰金=207条1項3号/顧客の3つの禁止=39条2項1号〜3号(「当該約束が自己がし、又は第三者にさせた要求による場合に限る。」3号も自分の要求によるときに限る)、顧客の罰則=200条14号、没収・追徴=200条の2、法人の罰金=207条1項5号/事故の例外=39条3項(業者の側)・5項(顧客の側)、国の確認=39条3項ただし書(1項2号・3号の場合。「その他内閣府令で定める場合」を含む)/事故の5つ=内閣府令118条1号イ〜ホ(システムの異常=ニ)/確認の申請先=120条、申請書に書くこと=121条/確認が要らない場合=119条1項1号〜11号、事後の報告=119条3項/出資法の禁止=1条、罰則=8条3項1号、刑法に正条がある場合=8条4項
- 事故の定め(金融商品取引法39条3項):「金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人の違法又は不当な行為であつて当該金融商品取引業者等とその顧客との間において争いの原因となるもの」のうち、内閣府令で定めるもの
- 事故の5つ(内閣府令118条1号・業者の代表者・使用人などが業務に関して行い、顧客に損失を及ぼしたもの):イ 顧客の注文の内容について確認しないで、顧客の計算により取引を行うこと/ロ 商品の性質・取引の条件・価格の騰落などについて、顧客を誤認させるような勧誘をすること/ハ 顧客の注文の執行において、過失により事務処理を誤ること/ニ 電子情報処理組織の異常により、顧客の注文の執行を誤ること/ホ その他法令に違反する行為を行うこと
- 確認の申請書に書くこと(内閣府令121条):業者の商号と登録番号、事故が起きた営業所の名称と所在地/事故となる行為に関係した代表者等の氏名または部署の名称/顧客の氏名と住所/事故の概要と、補塡する損失が事故に起因するものである理由/申込み・約束・提供をしようとする財産上の利益の額
- 確認が要らない11の場合(内閣府令119条1項・要旨):1〜3号 裁判所の確定判決、裁判上の和解、民事調停が成立している/4号 金融商品取引業協会のあっせん、または指定紛争解決機関の手続による和解が成立している/5〜7号 弁護士会の機関でのあっせん・仲裁、消費者基本法にもとづくあっせん・合意、認証紛争解決手続での和解/8号 弁護士または司法書士が顧客を代理した和解で、支払額が1,000万円以下(司法書士はその代理権の範囲)、かつ事故であることを代理人が調査・確認した書面がある/9号 支払額が1,000万円以下で、協会の内部に置かれた委員会(利害関係のない弁護士・司法書士で構成)が事故であることを調査・確認した/10号 118条1号の行為による損失について、1日の取引で提供する利益が100万円相当を超えない/11号 事務処理の誤り(ハ)またはシステムの異常(ニ)で、帳簿書類や顧客の注文の記録から事故であることが明らか。9〜11号で確認を受けずに補塡したときは、その月の翌月末日までに、121条の事項を財務局長に報告(119条3項)
- 出資法1条の文言:「何人も、不特定且つ多数の者に対し、後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示し、又は暗黙のうちに示して、出資金の受入をしてはならない。」
- 3万円の損、10月に埋めて11月末日までに報告、「10万円から元本保証」の投稿は、説明のための仮の例です
- 国による確認の件数、実際に補塡された件数や金額、各社がシステム障害のときに実際にどう対応したかは、本記事では確認していません
- 約定の訂正・取消しが金商法39条の上でどう位置づけられるか、また個別の事案が「事故」に当たるかどうかは、事実関係によります。裁判例や監督指針の記述は、本記事では確認していません
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