スリッページが不利にばかり出るのはOK?|国内のルールと確かめ方

スリッページが不利にばかり出るのはOK?|国内のルールと確かめ方

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FXで成行の注文(値段を決めずに出す注文)を出したら、画面より不利な値段で約定(取引が成立)した。このずれ(スリッページ)が不利な方向にばかり出るなら、業者のズルではないのか、と気になりますよね。金融庁の監督指針と、金融先物取引業協会の規則で確かめます。

結論を先に書きます。国内の登録業者が、ずれを顧客に不利な方向にだけ使う扱い(非対称な扱い)は、2013年8月9日から問題とされています。有利に0.3銭ずれたときだけ、ずれなかった値段で約定させる、といった扱いです(仮の例)。ただし、このルールは国内の登録業者と協会の会員向けで、無登録の海外業者には届きません。

目次

スリッページって何?どこからのずれ?

ドル円の表示150.000円で成行の買いを出し、150.003円で約定した仮の例。スマホの画面で0.3銭のずれを大きく示し、時計の絵で注文が伝わる間に時間がたつことを添え、このずれがスリッページだと美咲が確かめている図

スリッページは、注文したときの価格と、実際に約定した価格のずれです。

「注文したときの価格」が何かは、注文の種類で変わります。FX業者などが会員になっている金融先物取引業協会の規則が、次の3つに分けています。

注文の形(規則の言葉をやさしく)注文したときの価格当てはまりそうな注文(推定)
売買したい価格を指定する注文その注文の価格指値
価格を指定せずに出す注文注文したときの表示価格成行
注文を執行するきっかけ(起点)として価格を指定する注文その指定した価格逆指値

たとえば、ドル円の表示が150.000円のときに、成行で買ったとします。150.003円で約定すれば、ずれは0.003円=0.3銭で、買う側に不利なずれです(仮の例)。

監督指針は、金融庁が業者を監督するときの手引きです。そこではスリッページを「注文の伝達に係る時間の経過等に伴い必然的に発生するもの」としています。注文を伝えるあいだに時間がたつことなどにともなって、避けられずに起きるもの、という意味です。

つまり、ずれが出ること自体は前提です。問われるのは、業者がずれをどう扱うかです。

やること:自分がよく使う注文で、どの価格が「注文したときの価格」になるかを知っておく。

ずれを不利な方にだけ使うのはダメ?

表示150.000円で買う仮の例で、不利なら150.003円で約定させ、有利に149.997円で約定できたときは150.000円にする扱いを左右のカードで比べ、有利なずれだけ消す扱いに赤い×を付け、国内の登録業者では2013年8月9日から問題とされることを示した図

国内の登録業者なら、問題とされています。監督指針は、顧客に不利になる「非対称な取扱い」の例を3つ挙げています。業者がそれをしていないかを見る、としています。非対称とは、有利なずれと不利なずれで扱いが違うことです。

金融先物取引業協会の規則は、同じ3つを、会員が「行ってはならない」と定めています(協会の記事)。

非対称な扱い中身
① 有利なずれを消す不利にずれたときはずれた価格、有利にずれたときはずれなかった価格で約定させる
② 不利な側の幅を広く取るずれをどこまで認めて約定させるかの幅(許容するスリッページの幅)を、不利な側に広く取る。監督指針は、顧客が幅を指定できる場合も含めている
③ 不利な側の上限を大きく取るずれた価格で約定させる取引額・数量の上限を、不利な側で大きく取る

最初の例なら、不利にずれたときは150.003円で約定させます。一方、有利にずれて149.997円で約定できた場面では、150.000円で約定させます。これが①の扱いです(仮の例)。

金融庁は2013年6月25日に改正案を公表しました。そして8月9日にこの項目を新しく設け、同じ日から当てはめました。

協会の規則の関係する2つの条も、同じ日に新しく設けられました。規則の最後にある附則(始まりや切り替えの決まり)に、そう書かれています。当時の会員は、11月30日までは前の決まりのまま(従前の例)とされました。

改正案への意見募集で、金融庁が出した回答のうち、2つを紹介します。1つは、決まりのすり抜け(潜脱)には「厳正に対処」すること。合理的な理由のない約定拒否(注文を成立させないこと)などが、その例です。もう1つは、電話だけで約定する業者にも当てはまることです。

この項目は、業者が顧客に「誠実・公正」であるべき、という考えから置かれています。その義務を定める法律は、2024年11月1日から別の法律に移っています(出典・注記)。

やること:約定したら、表示の価格と約定の価格を見比べるくせをつけておく。

業者は前もって何を説明するの?

ずれを対称に扱う業者でも、スリッページが起きること・その原因・有利と不利の扱いを前もって説明し、協会の規則では取引の前に渡す取引説明書などに注文の種類ごとに書くことを、封筒と大きな取引説明書の絵と佳奈で示した図

ずれを対称に扱う業者、つまり有利なずれも不利なずれも同じように扱う業者でも、説明は要ります。監督指針は、次のことを前もって十分に説明しているかを見るとしています。

金融先物取引業協会の規則も、ほぼ同じ中身を書面に書くよう求めています。取引説明書など(取引の前に業者が渡す説明の書面)です。しかも注文の種類ごとに書かせています。

項目監督指針(前もっての説明)協会の規則(取引説明書など・注文の種類ごと)
起きることスリッページが起きること起きることがある場合は、そのこと
原因その原因起きる原因となるしくみのあらまし
有利・不利有利・不利のどちらにも働く可能性と、業者での有利・不利の扱い顧客にとっての有利・不利の状況

協会の規則は、「注文の執行の基準」も会員に決めさせています。注文をどう処理するかの決まりで、約定に使う価格なども含みます。そのうち取引の条件に当たる部分も、取引説明書などに書かせています。

協会の会員の業者なら、取引説明書で、自分の注文でのずれの扱いを確かめられます。

やること:協会の会員の業者なら、取引説明書の、自分が使う注文の種類のところを読んでおく。

実際に問題にされた例はある?

スリッページが関わって問題にされた3つの例(2012年の業務改善命令、2013〜14年度の検査での指摘、2020年の「0%」広告への業務改善命令)と、2013年以後に非対称が理由の処分は言葉で調べた範囲で見つからない(ないとまでは言えない)ことを示した図

監督指針によると、金融庁は、聞き取りや報告を出させることで、業者の改善の様子をつかみます。重大な問題には、業務改善命令(業務を改めるよう命じる処分)などで対応します。重大・悪質な法令等の違反には、業務停止命令なども検討するとしています(行政処分の記事)。

スリッページが関わった例は、一次資料(役所が出した元の資料)で3つ確認できました。どれも業者1社ずつの例です。

時期中身結果
2012年6月19日の勧告FX業者。取引をつなぐ先(カバー先)でもある米国のグループ会社が、スリッページの不当な扱いで米国内で処分された。それなのに、自社の顧客に特に対応しなかった同年7月3日 業務改善命令
平成25〜26年度(2013〜2014年度)の検査証券CFD(株価などの値動きで取引するもの)の業者。業者に有利なときだけ最新の価格で約定させ、顧客に有利なときは発注したときの価格で約定させていた内部管理の態勢が足りない(不備)という指摘
2020年8月4日の勧告FX業者。スリッページをなくせない仕様と知りながら、2017年9月6日〜2019年11月18日の広告に「スリッページなし(0%)」と載せた広告の決まりに違反。8月19日 業務改善命令

勧告は、証券取引等監視委員会が金融庁に処分を求めるものです。この表は、読むときに注意が3つあります。

1つ目(2012年)は、システム管理や証拠金不足と合わせた勧告です。スリッページは「不当な取扱い」とだけ書かれ、非対称だったかは書かれていません。

2つ目は検査での「指摘」で、勧告や処分ではありません。3つ目は、広告で「実績に関する事項」について、著しく事実と違う表示をしたとされたものです。

2013年以後に、非対称なスリッページそのものを理由にした勧告や処分も探しました。言葉で絞り込んで調べた範囲では、見つかりませんでした。ないとまでは言えません。

やること:「勧告」「指摘」「命令」を、同じ重さのものとして読まない。

約定がおかしいと思ったら?

美咲が業者の担当者に取引のときの価格を見せてほしいと確かめる場面。国内の登録業者では、取引時に表示された価格は求めれば見せることとされ、保存は3年間、店頭金融先物取引なら日ごとの始値・高値・安値・終値での提示でもよいことを、ローソク足の画面と保存箱で示した図

約定に納得できないときの手段もあります。取引のときに表示された価格は、顧客が求めれば、業者が見せることとされています。

国の決まり(内閣府令)は、取引所を通さない取引(店頭デリバティブ取引)について、ある状況を挙げています。業者が、取引のときに表示した価格を、求めた顧客に見せていない状況です。業者は法律により、この状況にならないように業務を行わなければなりません。

項目中身
見せる対象取引のときに表示した価格
見せ方店頭金融先物取引(取引所を通さない金融先物の取引)なら、取引日ごとの始値・高値・安値・終値(その日の最初・一番高い・一番安い・最後の価格)でよい
保存取引のときに表示した価格を3年間

日ごとの4本値(始値・高値・安値・終値の4つ)で見せることが認められています。そのため、注文した瞬間の価格そのものが示されるとは限りません(推定)。

監督指針は、注意をうながす書面を配ることも求めています。そこには、指定ADR機関(裁判の外で、争いの解決を手伝う機関)などの連絡先を書きます。

やること:国内の登録業者で約定に納得できないときは、取引のときの価格の提示を業者に求める。書面にある連絡先も確かめておく。

無登録の海外業者にもこのルールはある?

監督指針や協会の規則は、柵で囲んだ国内の登録業者・協会の会員の中だけに届き、柵の外にいる無登録の海外業者には届かないことを、ルールの本からの矢印が柵で止まる絵と勝又で示した図

このルールは届きません。監督指針の対象は「金融商品取引業者等」です。法律の登録を受けた金融商品取引業者と、登録金融機関(登録を受けた銀行など)のことです。

金融庁は、無登録の海外所在業者(会社が海外にある業者)の一覧を出しています。その令和8年(2026年)9月25日更新の版には、次のようなサービス名が載っています。「XMTRADING、XMTrading」(令和2年=2020年8月)や「XM WebTrader」(令和6年=2024年9月)などです(無登録業者一覧の読み方)。

登録のない業者には、監督指針も、価格の提示の決まり(内閣府令)も当たりません。協会の規則も、協会の会員に向けたものです。

XMが公表している約定の約束の意味は、約定拒否なしの記事で読みました。XMがスリッページを対称に扱っているかは、この記事では確認していません。

やること:使う業者が、国内の登録業者か、協会の会員かを、先に確かめておく。

まとめ

取引説明書でずれの扱いを読むことと、取引のときの価格の提示を求めることの2つを番号つきのカードで示し、無登録の海外業者には届かないことを添え、美咲がこの2つでよいかを確かめている図
  • スリッページは、注文したときの価格と約定した価格のずれ。「注文したときの価格」は注文の種類で決まる
  • ずれること自体は前提。問われるのは業者の扱い方
  • 有利なずれを消す・不利な側の幅を広く・上限を大きく、の3つの非対称な扱いは、2013年8月9日から問題とされ、協会は会員に禁じている
  • 対称に扱う業者にも前もっての説明が要り、取引説明書には注文の種類ごとに書く
  • 問題にされた例は、2012年の命令、平成25〜26年度の検査での指摘、2020年の「スリッページなし(0%)」の広告への命令
  • 取引のときに表示された価格は、求めれば見せることとされ(店頭金融先物取引なら日ごとの4本値でもよい)、保存は3年間
  • どれも国内の登録業者・協会の会員向け。無登録の海外業者には届かない

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国内の登録業者を併用する、という選び方

このサイトは海外業者の取引条件を扱っていますが、国内の登録業者を併用するという選択もあります。国税庁タックスアンサー No.1521 の原則では、第一種金融商品取引業者または登録金融機関との店頭デリバティブ取引は申告分離課税で、損失を翌年以後3年に繰り越せます。この線がどこに引かれているかは総合課税の記事に書きました。

  • MATRIX TRADER(JFX株式会社/関東財務局長(金商)第238号・第一種金融商品取引業)
  • 【DMM FX】(株式会社DMM.com証券/関東財務局長(金商)第1629号・第一種および第二種金融商品取引業)

⚠ 実際にどちらの課税区分になるかは、取引の相手方が第一種金融商品取引業者または登録金融機関かどうかで決まります。上に書いた2社の登録番号と業務の種別は、金融庁「金融商品取引業者登録一覧」(令和8年7月31日現在)で確認しました。登録は取り消されることも、業務の種別が変わることもあります。最新は同じ一覧でご自身で確かめてください。また、国内業者には金融庁の規制により個人口座の最大レバレッジに上限があります。

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XMTradingはTradexfin Limitedのブランドで、セーシェル金融サービス庁の規制を受けており、日本の金融庁の登録は受けていません(金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」に掲載)。デリバティブ取引には投資元金を失うリスクがあります。

出典・注記

  • 金融庁「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」(令和8年8月)I-1、IV-3-3-2(3)・(4)、IV-3-3-4(1)・(6)、同 改正案の公表(平成25年6月25日)と意見募集の結果・別紙1・2(同年8月9日)(2026年9月28日取得)
  • 金融先物取引業協会「金融先物取引業務取扱規則」第25条の2の2・第25条の2の3・附則(2026年3月30日改正の版、2026年9月28日取得)
  • 金融商品取引法 第2条・第29条・第36条・第37条・第40条・第51条・第52条、金融商品取引業等に関する内閣府令 第78条・第123条、金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律 第2条(e-Gov法令APIで取得・2026年9月28日。金商法36条は2024年10月31日と11月1日の版を比較)
  • 証券取引等監視委員会の勧告(平成24年6月19日・令和2年8月4日)・市場へのメッセージ(令和2年9月17日)・指摘事例集(平成27年6月)・証券モニタリング概要・事例集(令和3年8月)、金融庁の行政処分事例集(令和8年6月30日時点)・報道発表(令和2年8月19日)・無登録業者一覧(令和8年9月25日更新)(2026年9月28日取得)
  • 本文と条文の対応:スリッページの定義=監督指針IV-3-3-2(4)⑧ロ/「注文時の価格」と注文の形=協会規則25条の2の2第3項1号/3つの非対称な取扱い=監督指針IV-3-3-4(1)①イ・ロ・ハ(着眼点)、協会規則25条の2の2第3項1号・2号・3号(会員に禁止)/意見募集への回答=No.1(潜脱への厳正な対処)・No.5(電話だけで約定する業者への適用)/誠実・公正の義務=金融サービス提供法2条1項(2024年11月1日から。それまでは金商法36条1項)/事前の説明=監督指針IV-3-3-4(1)②、取引説明書等への注文の種類別の記載=協会規則25条の2の3第3項2号/注文の執行の基準=協会規則25条の2の2第1項・第2項、取引条件に当たる部分の記載=同25条の2の3第3項1号/改善状況の把握と対応=監督指針IV-3-3-4(6)、業務改善命令=金商法51条、業務停止命令等=金商法52条1項/2020年の例=金商法37条2項違反、金融商品取引業等に関する内閣府令(業府令)78条6号の「実績に関する事項」の著しく事実に相違する表示/取引時に表示した価格の提示=業府令123条1項21号、業者の義務=金商法40条2号、日ごとの4本値での提示=監督指針IV-3-3-2(4)①イ、3年間の保存=同①ロ/指定ADR機関等の連絡先を書いた注意喚起文書の配布=監督指針IV-3-3-2(3)/監督指針の対象=監督指針I-1、金融商品取引業者=金商法2条9項・29条の登録
  • 150.000円などの価格は仮の例です。表の「当てはまりそうな注文」は当サイトの推定です
  • 西暦(令和2年=2020年、令和6年=2024年、令和8年=2026年、平成25〜26年度=2013〜2014年度)と、0.003円=0.3銭の換算は当サイトで書き添えたものです
  • 非対称なスリッページそのものを理由とした2013年以後の処分の有無、2012年の米国での処分の中身、両年の業務改善命令の全文、FXが「店頭金融先物取引」に当たることを定める条文、2013年以後の改正の履歴(文言は2013年版と一致)、個々の業者の取引説明書、XMのスリッページの扱い、金融サービス提供法2条が無登録業者に及ぶかは、本記事では確認していません
  • 本記事には、当サイトが広告を掲載している業者(XMTrading)が含まれます。一覧の記載は金融庁の公表資料によります

本記事は法令と監督指針の一般的な解説であり、法的助言や、特定の業者・取引を勧めるものではありません。具体的な事案は、取引している業者の書面を確かめたうえで、専門家にご相談ください。記載は執筆時点の公開情報に基づきます。

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