SNSの『この銘柄来る』に乗っていい?|煽り投稿の手口と罰則

SNSの『この銘柄来る』に乗っていい?|煽り投稿の手口と罰則

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SNSで「この銘柄来る」という煽り投稿を見て、乗るか迷っていませんか。映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の「ポンプ・アンド・ダンプ」と同じ形かもしれません。日本の法律では「風説の流布」や「偽計」に当たりうる手口です。

結論を先に書きます。煽り投稿には、先に買った人が買い手を集めるために出すものがあります。見た目では見分けられないので、身を守るのは倍率です。たとえば20倍なら、4%下がるだけでロスカット(自動で決済)です(必要証拠金ちょうど・ロスカット水準20%の単純計算)。

目次

「この銘柄来る」の裏で何が起きてる?

「この銘柄来る!」の投稿が映るスマホと山形の値動きで、投稿した人が先に買い、投稿を見た人が買って上がった所で売り抜け、そのあと値が大きく下がる流れを示した図。美咲が乗り遅れを気にしている

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』は、2013年の映画です(マーティン・スコセッシ監督)。派手な浪費の場面ばかりが記憶に残りますが、物語を動かすしくみは驚くほど地味です。

しくみは、これだけです。

  1. 安い株を、先に自分たちで買っておく
  2. 電話で他人に買わせて、値を上げる
  3. 上がったところで、自分たちが売り抜ける

これが、いわゆるポンプ・アンド・ダンプ(pump and dump)です。いま日本のSNSで起きていることと、しくみは変わりません。

値動きで見ると、投稿した人は山の頂上の手前で売り抜けます。その直後に、投稿を見た人が買います。そのあと値は、その人たちの買値を大きく下回って崩れます。

この記事を読んでいる人のほぼ全員は、煽られる側にいます。

やること:「この銘柄来る」を見たら、投稿した人がもう買っているかもしれない、と考える。

煽る投稿は罪になるの?

フォロワーの多いアカウントと少ないアカウントのスマホ画面に同じ注意マークを付け、うわさで相場を動かす投稿などの禁止は「何人も」で、フォロワーが少なくても個人でも対象になることを示した図。蓮が問いかけている

なる場合があります。金融商品取引法は、次のことを禁じています。

  • 風説の流布(合理的な根拠のない情報を広めること)
  • 偽計(他人をだます計略を使うこと)
  • 暴行や脅迫

株などの取引やデリバティブ取引(値動きをもとにした取引)のためにするときです。相場を動かす目的でするときも同じです。「風説」「偽計」は、上のような意味だと解釈されています。

映画で描かれる、電話ごしの大げさなセールストーク。日本でやれば、ここに当たります。

大事なのは、法律の書き出しが「何人も(だれであっても)」になっていることです。

インサイダー取引の決まりは、対象を限っていました。「会社関係者」と、そこから情報を受け取った人です。この禁止には、その限りがありません。

上場会社と何の関係もない一般の個人も、そのまま対象になります。フォロワー数の下限もありません。

個人のアカウントであること、収益化していないこと、少しの人にしか届いていないこと。どれも、法律で対象から外れる理由になっていません。

やること:「フォロワーの少ない個人なら関係ない」とは考えない。

売買しなくても投稿だけで違反?

「仕手が入ってる」「大口が集めてる」「みんなで買えば上がる」の投稿カードを並べ、売り買いを誘う目的があれば、売り買いしていなくても違反になりうることを示した図。ただの感想や分析は別。凛が確かめている

なりえます。法律は、「売り買いを誘う目的(買わせる・売らせる目的)」で行う3つのことを禁じています。その1つが、上場株などの相場が「自分や他人の操作で動く」という話を広めることです。

この決まりには、売り買いをしたことが条件として書かれていません。「広めること」だけで成り立つ形です。

見せ玉(約定させるつもりのない注文を出すこと)のように、注文を出す必要はありません。株を持っている必要もありません。

たとえば、こんな投稿が当たりうるということです。

  • 「この銘柄、仕手が入っている」
  • 「大口が集めているらしい。来週飛ぶ」
  • 「みんなで買えば上がる。◯日◯時に一斉に」

どれも「相場がだれかの操作で動く」という話を広めるものです。仕手は大きなお金で値段を動かそうとする人、大口は大きなお金で売り買いする人のことです。

同じ目的で、大事なことについて、うそや誤解させる表示をわざとすることも禁じられています。数字を盛った実績のスクリーンショットは、ここに近づきます。

ただし、「売り買いを誘う目的」があることが条件です。ただの感想や分析まで、違法になるわけではありません。

その目的は、本人が心の中をどう説明するかではなく、外から見た形で判断されます。見られるのは、投稿の中身、くり返し、自分の売り買いのタイミングとの関係です。「煽るつもりはなかった」と言っても、それだけでは違反ではない理由になりません。

持っている銘柄について投稿するなら、少なくとも次の2つは線を引いておく必要があります。

  • 「だれかの操作で上がる」という話を書かない。売り買いがなくても成り立ちうる形だから
  • 根拠のない数字や、加工した実績を出さない。売り買いを誘う目的があれば、違反に近づくから

当サイトは、個別の銘柄の売り買いを勧めません。取引条件・制度・法律の側だけを書いているのは、この線を越えないためです。

「どの銘柄が上がるか」は書けません。でも「どういう建て方(いくらを何倍で取引するか)なら生き残るか」は書けます。

やること:自分で銘柄について投稿するときは、上の2つの線を守る。

罰はどれくらい重いの?

ふつうは10年以下の拘禁刑か1,000万円以下の罰金(両方も)、利益を得る目的で相場を動かしその相場を使った場合(煽って売り抜けたときなど)は10年以下の拘禁刑と3,000万円以下の罰金の両方になることを2段のカードで示した図

こうした違反の罰は、「10年以下の拘禁刑」か「1,000万円以下の罰金」、またはその両方です。拘禁刑は、刑事施設に入れられる刑です。

さらに重い場合があります。財産上の利益を得る目的でこうした違反をし、相場を動かしてその相場を使った場合です。ポンプ・アンド・ダンプで実際に売り抜けた場合が、まさにこれに当たります。

どんなとき法律で決まっている刑罰金だけで終わる?
うわさを広める・売り買いを誘う投稿など10年以下の拘禁刑か1,000万円以下の罰金、または両方ありうる
利益を得る目的で違反をして相場を動かし、その相場を使った(売り抜けなど)10年以下の拘禁刑と3,000万円以下の罰金の両方ない

2つめは「及び(両方)」という書き方なので、罰金だけで済ませる選択肢がありません。

「懲役」ではなく「拘禁刑」と書いたのには、理由があります。2022年に成立した改正刑法が、2025年6月1日に施行されました。懲役と禁錮は、拘禁刑に一本化されています。

金融商品取引法を含むほかの法律の刑も、あわせて書き換えられました。多くの解説記事の罰則の書き方は、いま古くなっています。いまも「10年以下の懲役」と書いている解説は、その時点で更新が止まっています。

稼いだ分も残りません。これらの罪で得た財産は、没収されます。没収できないときは、その額を犯人から追徴(お金で取り立てること)されます。

使ってしまっても、消えてしまっても、金額として追いかけられるということです。

映画の結末で、主人公のベルフォートは逮捕され、築いたものを失います。日本の法律にも、同じはたらきの決まりがあるわけです。

さらに課徴金(行政処分として、国にお金を納めさせるもの)もあります。刑事事件にならない場合でも、お金の納付を命じられます。対象は、たとえば次のとおりです。

  • うわさや計略(風説の流布・偽計)で、値段に影響を与えた
  • 仮装売買・馴合売買(自分だけで、または仲間と示し合わせて、取引が盛んに見えるようにする売り買い)
  • 売り買いを誘う目的の、一連の売り買い(変動操作)
  • 違法な安定操作(値段をくぎ付けにしたり、固定したりする売り買い)

どれも「命じなければならない」という書き方で、見送ってよい形にはなっていません。法人が関わっていれば、法人にも7億円以下の罰金が別にかかります。

業者が登録を受けずに営業したときの罰則も、同じ法律にあります(無登録営業の条文と罰則)。こちらの対象は業者で、使う人を罰する決まりはそこにはありません。

やること:罰則を調べるときは、「拘禁刑」と書いてある新しい解説で確かめる。

投稿が本当かどうか見分けられる?

同じ見た目の「来る!」の投稿カード3枚に大きな「?」を重ね、裏側はただの意見・先に買った人の宣伝・違反になりうる投稿で、見た目では区別できないことを示した図。美咲がどれが本当かと問いかけている

見分けられません。タイムラインに流れてくる「この銘柄来る」は、次の3つのどれかです。

  1. ただの意見・分析
  2. すでに買った人が、買い手を集めるために出す投稿(ポジショントーク)
  3. 売り買いを誘う目的の、法律に触れうる投稿

この3つを、投稿の見た目から区別することはできません。2と3は、1とまったく同じ書き方ができるからです。むしろ2と3の方が、文章がうまいのが普通です。

売るために書かれているのですから、当然です。だから「情報の真偽を見抜く」は、解決策になりません。見抜けないことを、前提に置くしかないのです。

情報の質で身を守るのをやめて、建て方で身を守る。

建て方とは、いくらを何倍で取引するかです。煽りに乗る買いには、共通する3つの性質があります。

  • 入る場所が高い。投稿が回ってくるのは、すでに値が動いた後だから
  • 急いでいる。「乗り遅れる」という気持ちが、取引の大きさの計算を飛ばさせる
  • 出口(いつ売るか)が決まっていない。他人の理由で入ったので、やめる理由を自分で持っていない

3つ目がいちばん重いです。買った理由が他人の投稿なら、その投稿が消えても、自分の建玉(まだ決済していない取引)は消えません。

やること:投稿の真偽を当てようとせず、取引の大きさと倍率を先に決める。

20倍で乗ると何%で終わる?

証拠金5万円(仮の例)を20倍で100万円分にすると、4%(4万円)値下がりで終わり、5倍なら16%、2倍なら40%まで耐えることを値下がりの物差しで示した図。必要証拠金ちょうど・ロスカット20%の単純計算

数字にしてみます。株のCFD(株の値動きの差額をやり取りする取引)で、ロスカット水準を20%とします。ロスカットは、損が大きくなったときに取引が自動で決済されるしくみです。

すると、耐えられる逆行は、レバレッジ(倍率)で決まります。逆行とは、買ったのと逆に値段が動くことです。

耐えられる逆行 = 0.8 ÷ レバレッジ

仮の例です。証拠金(取引のために預けるお金)5万円で、20倍の100万円分を買ったとします。100万円の4%、つまり4万円下がると、5万円は1万円まで減って終わりです。

1万円は、必要な証拠金5万円の20%です。下の表の倍率は、実効レバレッジ(取引の額が、口座のお金の何倍か)です。

実効レバレッジ耐えられる逆行煽り銘柄で起きること
20倍4%その日の高値づかみ(高い所で買うこと)で、ほぼ確実に届く
10倍8%翌日の反落(上がった後の下げ)で届く
5倍16%数日の調整(一時的な下げ)には耐える
2倍40%話が嘘でも、判断する時間が残る

※ 必要証拠金ちょうど・ロスカット水準20%とした単純計算です。実際の水準と計算方法は各社で異なります。

煽られて動いた銘柄が、翌日に4%逆へ戻すのは、まったく普通のことです。つまり20倍で煽りに乗ると、「その投稿が正しいか」を確かめる前に退場する形になります。確かめる時間を、自分で買っていないのです。

逆に言えば、倍率を下げることは「他人の話を信じなくて済む状態」を買うことです。倍率の話は、実は情報の見方の話でもあります。

マネー・ショートの記事は、「正しくても、耐えられる時間がなければ負ける」という話でした。こちらは「正しいか分からない情報でも、耐えられる時間さえあれば即死はしない」という話です。

「ゼロカットがあるから大きく建てられる」と考えるのも危ういです。ゼロカットは、口座がマイナスになった分を請求しないとする業者のしくみです。それでも何が守られないかは、ゼロカットが保証していないことに書きました。

この計算を銘柄ごとに見るなら、株式CFDの証拠金の記事がくわしいです。

やること:乗る前に、自分の倍率なら何%下がるとロスカットになるかを計算しておく。

まとめ

まとめとして、煽り投稿は先に買った人の宣伝のこともある、投稿だけでも違反になりうる、20倍なら4%で終わる、の3つをチェックの形で並べ、凛が倍率を先に決めたかを問いかけている図
  • 「この銘柄来る」には、先に買った人が買い手を集めるための投稿がある。映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のポンプ・アンド・ダンプと同じしくみ
  • 風説の流布・偽計の禁止は「何人も(だれでも)」。フォロワー数の下限はなく、一般の個人も対象
  • 売り買いを誘う目的があれば、売り買いしていなくても投稿だけで違反になりうる。ただの感想や分析まで違法になるわけではない
  • 罰は10年以下の拘禁刑か1,000万円以下の罰金(両方も)。利益を得る目的で違反をして相場を動かし、その相場を使うと、10年以下の拘禁刑と3,000万円以下の罰金の両方。2025年6月1日から「懲役」ではなく「拘禁刑」
  • 得た財産は没収・追徴。別に課徴金(命じなければならない)、法人には7億円以下の罰金
  • 投稿の真偽は見た目では見分けられない。身を守るのは建て方(倍率)。20倍なら4%で終わり、確かめる時間が残らない(必要証拠金ちょうど・ロスカット20%の単純計算)

出典・注記

  • 金融商品取引法157条・158条・159条・173条・174条・174条の2・174条の3・197条・198条の2・207条は、e-Gov 法令検索の法令データ(法令ID 323AC0000000025)から本記事執筆時点の条文を直接確認したもの
  • 本文と条文の対応:風説の流布・偽計・暴行または脅迫の禁止(何人も)=158条(インサイダー取引は166条)/売り買いを誘う目的の3つの行為=159条2項(「操作で動く」と広める=2号、うそや誤解させる表示=3号)/罰=197条1項5号(157条・158条・159条の違反)、利益を得る目的で相場を動かして使った場合=197条2項/没収・追徴=198条の2(197条1項5号・6号と2項の罪)/課徴金=173条(158条違反で価格に影響を与えた者)・174条(159条1項の仮装売買・馴合売買)・174条の2(159条2項1号の変動操作)・174条の3(159条3項の違法な安定操作)/法人の罰金=207条1項1号/無登録営業=29条・171条の2・197条1項4号の3
  • 2026年9月28日訂正:無登録営業の罰則の条番号を、2026年8月12日施行の条文(197条1項4号の3)に合わせて直しました(公開時は「197条の2第4号の3」)
  • 懲役・禁錮の拘禁刑への一本化=刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)、施行日 令和7年(2025年)6月1日
  • 証券取引等監視委員会「金融商品取引法における課徴金事例集~不公正取引編~」、同「告発の現場から④」
  • 映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013年公開/マーティン・スコセッシ監督)
  • ロスカット水準20%・実効レバレッジの計算は説明のための単純化であり、実際の判定方法・水準は提供業者により異なります
  • 証拠金5万円・100万円分・4万円・1万円は、上の単純計算(必要証拠金ちょうど・ロスカット水準20%)にあてはめた仮の例です

本記事は制度と法令の一般的な解説であり、特定の行為の適法性を判断するものでも、法律相談に応じるものでもありません。個別の事案が条文に当たるかどうかは事実関係によって異なります。判断に迷う場面では弁護士にご相談ください。また本記事は投資判断や特定の銘柄の売買を勧誘するものではなく、当サイトの運営者は金融商品取引法上の投資助言・代理業の登録を受けていません。記載は執筆時点の情報に基づきます。

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